嘘から恋は始まらない

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懐かしい夢を見た。
入社式の後、同期3人で顔合わせをした時、私たちは笑っていた。

慣れないスーツが硬くて、ぎこちなく笑った吉沢の顔が面白くて、その瞬間から私たちは仲良くなった。

“亮”と呼ぶと、“何？A”と返ってくる。その声は今よりもずっとずっと優しくて、微笑んだその瞳は私を捉えて包んでくれた。

将暉が私の頭をわしゃわしゃと撫でる。髪の毛が崩れると私は拗ねて、機嫌をとるために彼はご飯に誘ってくれる。3人で何回ご飯に行ったか分からない。

それくらいに私たちは仲が良かった。









「ーーー…ん、」


目が覚めて何気なく目を擦るといつもはない感覚があった。


「え、泣いて、」


手が濡れて私の目から涙が溢れてることに気づいた。
懐かしい夢を見て私はそれがもう戻らないと悲しくなったんだなと思った。


「…将暉、」


将暉と飲みに行って帰りの記憶がないあたり私は酔い潰れてたのだろう。少し頭が痛い。彼は本当によくできた人だ。私の家まで送り届けてくれるのは彼しかいないだろう。


「お礼、しなきゃな」


彼には本当に感謝しかない。
私と吉沢の関係が変わってもなお私の隣にいてくれる。支えられてるよ、と言葉にしたことはない。彼女も作らず律儀に私の愚痴やら何やらを聞いてくれることに不満がないのかが一つだけ気になる。

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