記憶＿メモリー＿ (ページ1)

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始まりページ1

…。目が覚めたら、『ここ』にいた。
暗く、何もない『ここ』に。
此処がどこだかも分からない。
私はなにをする為に此処にいるか分からない。
親の名前、友達の名前、
…私の、名前。
何もかも、覚えていない。
ただひたすら、激痛が走る頭を
押さえていることしかできない。
ただ、歩いていた。
こつん、
なにかに足がぶつかった。
ふと目を凝らす。ライト、だろうか。
ライトの明かりを付け、また歩き始める。
少し歩いた所に、水の入った洗面器があった。
まるでおびき寄せられたかのように。
ふと、洗面器を覗く。すると…
「やあ」
洗面器に写っているのは私ではなく、
黒い耳の生えた人。
「僕は黒猫。名前はウォリン。君は？」
突然かけられた言葉に少し驚きながら
答える。
「私は…わからない。」
ウォリンさんは黒い笑みを浮かべる。
「そうだ、君は記憶が無いんだったね！
…君はこの世界で、記憶のかけら。メモリーを探すんだ。」
「メモリー？」
「そう、メモリー。」