黎明の華【薄桜鬼】 (ページ6)

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5. 一本ページ6

激しい攻防戦の末、一本取ったのは一だった。

「あらら、負けちゃった」

『一、打ち方変えた？』

ずっと見ていて気になったことを尋ねる。

「あ、それ僕も思った」

「……いえ、変えたつもりは無いです」

そっか、それじゃあ私と総司の思い違い、かな？

「そっか。それならまあいいんだけど。Aさん、やりましょ」

『うん』

▹▸

結果は、総司には負けたけど、一には勝ちました。

『むー』

「どうしてそんなに膨れてるんですか」

笑いをこらえている総司。

『最近総司に勝てんくなってきたもん』

「そんなことないですよ。この間も僕Aさんに一本取られましたし」

『むー』

最近になってから総司もぐんと剣の腕が上がってきてる。技術というよりは、やはり力だ。

もっと鍛錬しんとかんな。

▹▸

「いやー！斎藤君がいると大分心強いな！！」

「…恐れ入ります」

一が久しぶりに加わってみんなも嬉しいためか、いつもよりも賑やかな夕餉。

いつも険しい表情の歳さんも笑みを浮かべている。一もどことなく嬉しそうだ。

「ちょっと新八っつぁん！俺の魚取るなよ！！」

「この世は弱肉強食なんだよ！！」

向かい側からいつものやり取りが聞こえてくる。

こんなに平和な日がずーっと、続けばいいな。

そう願わずにはいられない、夜だった。

▹▸

「みんな聞いてくれ。京にやってくる上様の警護に本日参加しようと思っている」

翌日。

広間に集まった私たちは勇さんの言葉に驚きを隠せなかった。

「幕府からの御達しか！？」

思わず身を乗り出す新八。

「いや、御達しではない。我らが自主的にやろうと思っているのだ」

「そんなことしてもいいのか？」

この質問はここにいるみんながしたかったのだろう、真剣に勇さんと歳さんを見ている。

「元々俺たちは将軍様の警護のために上洛したんだ。その本願を果たさにゃ意味ねぇだろ」

「歳の言う通りだ。将軍様の警備に割く人数は多い方がいいだろう。お前達も、将軍様を間近でお目通りするまたとない機会だ！心して将軍様を御守りするぞ！」

▹▸

私たちは将軍様の警護に馳せ参じたはいいが、見物人のせいで前に進むことができない。

「我らは壬生浪士組だ！将軍様の護衛で馳せ参じた！そこを通していただきたい！！」

勇さんの呼びかけに応える聴衆は一人もなし。

「っく……」

悔しい顔をする勇さん。

と、勇さんが駆け出した。

みんなで追いかける。