Honey Citrus ５

１９２　藤ヶ谷さんside ページ8

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「藤ヶ谷さん…、あの、俺……」



「ごめん、この後訪問入ってて。…お疲れ」






慕ってくれていた後輩にも


自分の近くにいるせいで悪い噂が立たないように

やがて俺から距離を取るようになった。








別に取引先との関係や仕事の内容に影響は無かったんだけど


…会社に俺の居場所が無くなった気がして。







「もう、いっそ辞めるか…？」




終業後の帰り道に

一人でそんなことを呟くようになった頃








＿＿＿＿俺は、本社会議のメンバーに選ばれた。








周りの人と関わりにくくなってからも

仕事だけは真面目に頑張ってきたつもりだったから


大きな仕事を任せられたのは嬉しかった。







自分が通っているビルよりも更に大きくて


そこで働いている同じ『営業部』の人達はみんな必死に走り回っていて。








「よっ藤ヶ谷。

　相変わらず男前だな〜」



「久しぶり。北山も変わらず活躍してるみたいだな、」





うっせ、って腹のとこ小突いてきた北山も

ここでは前より更に生き生きとしていた。







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…あれ、俺バインダー置いてきたかな。





本社会議も残り数日になったある日

会議室に忘れ物をして取りに戻ったことがあった。







もう誰もいないだろうと思って会議室へ戻ったら


中から、同じく横浜支社から来ていた

同じ部署の水野が出てきて。







「何でお前もこのメンバーに選ばれたの？」



「…俺に聞かれても答えられないよ。

　部長に聞いて貰えれば分かると思うけど」



「はっ、偉そーに。

　どーせこっちに女作って、口聞かせて貰ったんじゃねーの？こっわ。」






一言吐き捨てて

俺を一瞥して去っていった水野。





すげー嫌われようだな…





理由は、


水野が付き合ってたらしい女子社員が

先月俺に告白してきたから、きっとそれ。







「はは…、」




名前も知らなかった子が原因で

水野にここまで言われると


もはや困るというより苦笑いしか出てこない。






自分に呆れつつ、一つ大きな溜め息をついて

会議室へ入ったら







「うわ……っ、」




ビックリした…








「お疲れ様です！

　…あ、これあなたのですか？」





会議室にまだ一人いて。








その存在に全く気付いてなかったのと






「あれ、違いました…？」






俺のバインダーを差し出して

キョトン、ってこちらを見てる様子に驚いて。







…今の、聞こえてなかったのか？






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