Honey Citrus ５

２２７ ページ43

.



「ただいまー…」




誰もいない空間に自分の声が響く。




さっきまで隣で裕太が騒がしくしてたから

静寂が逆に頭にガンガンくる…。





温泉は気持ちよかったし、旅館のご飯も凄く美味しくて

久々に羽を伸ばした感はあったけど…






「はぁー…。」



未だ、絶賛罪悪感に苛まれ中です。






早々に荷解きを終わらせて

ソファーに深く沈んでスマホの画面を点ければ




＞明日11時な、家出る時また連絡する。




さっき北山さんから届いたメッセージ。





この前店先で慌ただしく別れた日には何にも連絡無くて

このまま明日の話無くなるかな…なんて思ってたのに





「スタンプ…ワンコ…」




今日はいつもと同じ、あの顔に似合わない

可愛い犬のスタンプも一緒に送られてきてて


もう頭の中で混乱してる…！






＞かしこまりました、よろしくお願いします！



＞仕事の定型文かよw



＞すみません (;;)





その後続いたやり取りだって

普段通りの私達で。





…北山さん、私が返事に詰まった理由

多分もう分かってるよね？





私が藤ヶ谷さんに告白されたの知ってたし




『…行っていいから

　週末は俺の家来い。』




あの時もう既に見透かされてたような気がして。





「……ん？」




頭の中でリピートされたこの前の言葉に

思わず身体を起こして固まる。





俺の家…？


って、北山さんの家？だよね？？





「え、なんで！？！？」




今気付いた！！！





あの時は必死だったから、


北山さんに申し訳ない気持ちでいっぱいで

ちゃんと考えれてなかったけど…





「北山さんの家！？」




なぜ！？



頭抱えて一人でパニックになってる…





でも明日ここまで迎え来てくれるなら

約束してた通り買い物とか行くんじゃないの…？




「えぇ…」




もう考えてもよく分かんない…


ドス、ってまたソファに座り込む。





…そうだよね、


普通男の人の部屋にあがる、って

もっとこう…多少は動揺するべきで。





藤ヶ谷さんの部屋でこの前……あったことは

もうホントに全部、私が悪いんだって改めて気付かされる。






「うぅ…、」



カチ、カチ…って頭の中に響く

秒針の音。





明日、私は＿＿＿








「…今日は早めに寝よ。」





自分でもこれが本当に正解なのか分からないけど

明日は北山さんと会って

この前のことちゃんと謝る。




そう心の中で決めて

スマホの画面を暗くした。





.

２２８→←２２６

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す