Honey Citrus ５

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「あの……っ、私ちょっと一瞬席外しますね！」



「え、A？」





荷物も下ろさないまま、そう言い出した私を

心配そうに見上げてくる藤ヶ谷さん。






「す、すぐ！ホントにすぐ戻ってくるので！」



「…わかった、」



「トイレなら出て左のとこな〜」





トイレじゃないんですけども…





どこか不安そうな表情の藤ヶ谷さんと

呑気にグラスを煽る岩井さんを席に残して


私は店の出入口に向かった。









「用事？って何…」



勝手に出てくる独り言。








お店を出てすぐ、スマホを取り出して

探してる人に連絡しようとしたら







「……あれ、」






ふわりと横から吹いてきた風に乗って


…知ってる甘い匂い。







それが誰のものなのか頭で考える間もなく


香りがしてきた方に足を運んだら







「…え。」




…ホントにいるんですけど。







お店を出てすぐの

道沿いに置かれたベンチに座って、


ボーッと空見上げてる。





え、なんで座ってるの…？







「あの、北山さん…？」



その場で恐る恐る声を掛けたら






「…うわ、やっと来た。」




おせーよ、って

ムッとした顔を怠そうにこちらに向けてきた。




かと思えば、また視線は上の方に戻されちゃって。






すみません、って謝りつつ

一歩ずつ近付いてみる。






「こんなとこで何してたんですか…？」




座ってる北山さんの隣に近付いて


ボーッと見上げてるその横顔に声を掛けてみたら







「…お前。」



「は、はい…？」





「ずっとお前のこと考えてた。」







またこちらに視線を向けた北山さんと

ぱち、って目が合った。





瞬間、あっという間に身体の奥の方から

ザワザワとくすぐったい感覚。







「き、北山さん…酔ってます…？//」



「今日まだ飲んでねーよ、」





そう言って、ベンチから立ち上がったから


必然的に、座ってた時よりも距離が近くなって。






どきどき…って自分の鼓動が早くなるのに

もはや何も驚かなくなってる、私…





目の前から漂ってくる甘い香りに

どこか恥ずかしいまま下向いてたら








「っし、じゃあ行くか。」



「えっ…？」






急に掛けられた声に思わず顔を上げた。



行くって


どこに…？






ワケの分からないまま

北山さんの次の言葉を待ってたら







「抜ける、っつったろ？」






子供みたいに悪戯そうな顔で

フッて笑われた。





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