【刀剣乱舞】壱を求める話 弐章

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日本号は思い浮かべる。
かつての本丸にいた頃の、小さな居候。

鬼の娘、ハナダ。
素直じゃなく、年齢にしては子供な子鬼。
その鬼の子と共に過ごした、かつての主。


以前の主、己の前任の審神者だった秋間。
秋間は体が弱かった。思う存分に走り回る事すら
困難な体を持っていた秋間だったが………



何物にも代えがたい、日本号にとって心地よい空間を
あの幼い主は与えてくれていた。
いつまでも守り通し、いつかの………些細な夢を
叶える日を待ち望んでいたあの頃。

だが、もう彼の者は居ない。
果たされることもなくなった夢の走馬灯を
日本号は思い描きながら、頬杖をついて一口日本酒を飲み干す。









日本「あいつも、主人も。そして仲間も。
皆、いい奴らばかりだったさ。楽しかった」


博多「その人達はもうおらんと………？」


日本「おう。おかげでいい酒も飲む事なく終わっちまったがな。
だが………もういいのさ。あの本丸はもう跡も残らず
政府によって解体されただろうが………

過ごした時間は、変わらねぇ。
俺ぁ気づけたんだよ。本当に守るべきもんを。
あいつらと過ごした時間こそ、守るべき歴史だってな」


博多「………おいしゃんが覚えとー限り、
そん人達が生きた確かな証拠ばい。
俺もそう。俺も前ん本丸にはお世話になった。
俺んとこの審神者も引退して、お爺ちゃんになるまで
人として精一杯生きとった。絶対に忘れん…………」


日本「嗚呼。………守る側は、辛ぇな」


博多「うん。泣きとうなるくらいに。
俺、審神者がばり好いとった。………本当に。

やけん思い出は大事にしてくれんね、
おいしゃん…………」


日本「ははは！お前が泣くなよ、博多」

博多「……………寂しか」

日本「そうだな。ほら、早く食って寝ちまえ」

博多「うん…………」









この本丸の夜は、静かすぎるほど静寂である。
それぞれに抱えるものを、この本丸の夜は思い出として
膨らませては寂しさを誘う。

刀剣男士達はその度に、誰かを思うだろう。
だが………それは悲しみではない。


彼らが語る物語。
それは泣きたくなるほど、優しいもの。


彼らは人と違い、いつまでも覚えている。
人と過ごした………淡い時を。

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