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??『………添え物が無かったから、私が』
大千「添え物？」
??『いけません、でしたか？』
大千「………別に。墓参りの決まり事など知らん。
言っただろう。人間の見様見真似だと。
それに何故あんたはここに居る。
俺に殺されに来たのか。恐ろしくはないのか」
何故そんな事を聞いたのか。
この女に、興味など無かった筈だ。
らしくない事をするものではないな。
問う自分自身に驚いた。
??『怖くないと言ったら、嘘になるけど………
死者の為に墓を作る人が、
心を痛める筈がないし………
人を嫌ってる割には私に忠告してくれたから、
少し気になって』
大千「…………」
??『内番、ご苦労様です』
立ち上がり、土埃を払いながら女は言った。
心を痛める？忠告？？
何を言っているんだこの女は。
そんなつもりは無かった。
無かった…………筈、なんだが。
俺はふと自分の手を見た。
失われていく温もり。
鼓動が停止する音。
息吹く呼吸が絶える瞬間。
………心を、痛める？
分からない。この感覚を、俺は………
遥か昔、知っているような。
忘れていた、この虚無は。
……………
………俺は、悲しいと
思っていたのだろうか。
猫の墓を見る。
添えられた花が風に揺れる。
───死。
それは、これ程………虚しいものだっただろうか。
───────────────
翌日もあの見習いは居た。
猫の墓に添え物を置き、手を合わせている。
大千「また来たのか」
??『！』
大千「お人好しだな」
??『…………そう言う貴方も。
その手にある花………………えっと、
何で“ツクシ”何ですか』
大千「その辺に生えていた。
ツクシは食える。食える野草の方が
添えるにはいいだろう」
??『(えぇ………っ、)』
畑に生えていたツクシを墓に添える。
女は何故か困惑していたが、
無視して餞に添えてやった。
………それから手を合わせるんだったか。
大千「…………あんた、名は」
??『？』
大千「………嫌ならいい」
この娘は、変わった奴だった。
俺を恐れていながら、
しかし自然な空気を纏いながら、
変わった事を口にする。
忘れかけていた死への見方を、
失う恐れと、悲しみを
俺に思い出させたこの女。
少し興味が湧いた。
??『あ……名乗ってませんでした、ね。
私の名前は───』
そう。それだけだ。
大千鳥side〜end〜
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2021年2月27日 11時
