145pager “祈りの歌” ページ26
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オルゴール《………すみまへん。
霊力を勝手に多用しましたわ》
『………付喪神として目覚める前の記憶を
見る為に、でしょう?』
オルゴール《知りたかったんよ。
あの人が、明石はんがどないな経緯で
ここに来たのか。
でも力が足らへんくて………すみまへん》
『それ、今更じゃない?』
オルゴール《…………》
彼女は気まずそうに俯いて、私に語る。
“オルゴール”としての記憶を辿るのに、
私の霊力が必要だったのだろう。
それはもう今更だから別に良いのに。
そう言ってあげると、彼女はまた俯いた。
オルゴール《………馬鹿みたいやったわ。うち。
あの人があんなに苦しんでたんに、
浮かれて、喜んで………
彼がどれだけ、苦しんどったか知らんで、
感謝したいやなんて、言えまへんよ………
会いになんて、とても》
『…………それは……君、あれだけ
会いたいって………言ってたじゃないか』
オルゴール《フルフル)ええんです。
それにもう、うち………
実態を保つ力なんて、残ってません》
『え、』
オルゴール《今、あんさんが見えてるんは、
うちがあんさんに取り憑いてるからや。
………もうすぐ、あんさんにも見えへんようなる》
透けて、いたのはそういう事………?
自身の記憶を見る為に力を使っただけで、
こんなに弱ってしまうものなの?
いくらなんでもそれは………!
私は彼女の言葉に対して、
何か言わなければと口を開くが、
彼女はそれを制した。
オルゴール《………ほんまにええんやで。
言葉をかわした事のないうちだけが生き残って、
あの人の大切な人らは皆、燃えてしまいました。
今更会った所で、うちはあの人を苦しめてまう。
それは、うちの望みやない》
『オルゴール………』
オルゴール《会った所で、もう………
他の付喪神にはうちは見えまへんよ。
最後にあんさんに声かけたんは、
お別れしたかったからや。
ありがとうな。誌重。うちの我儘に付き合わせて。
頭を撫でてくれて。独りにならへんよう、
うちに声をかけてくれて、嬉しかった。
………ほんまにありがとう》
彼女の体が消えかけている。消えてしまう。
本気で、彼女は明石さんに会わない気だ。
………違う。私はこんな………
こんな事をしたかったわけじゃ。
『…………待って!』
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2021年2月27日 11時