136pager “夢見る付喪神” ページ17
Aside
オルゴールは嬉しそうに、楽しそうに語る。
彼女にとってそれはかけがえのない
思い出なのだろう。
切国「そうか、その思い出が
今のあんたを具現化したのだろう」
ｵﾙｺﾞｰﾙ《ふふっ、はい！》
切国「良かったな。
その思い出、大切にするといい」
切国さんはそう言って、
オルゴールのふわふわした頭を撫でる。
頭を撫でるの、本当に癖なんだな………
頭を撫でてもらったオルゴールは
くすぐったそうに目を細める。
………撫でる癖は、彼が仕えていた
前審神者の影響だったりするのだろうか。
切国さんはどこか切なげだった。
───────────────
“まんばちゃん、一日の記憶を
保てないバグを持ってるんだ。
不便なバグだろう？”
“！だから、いつもあんなにメモを？”
“そう。他の男士には隠してるけどね。
近侍の燭台切と総隊長の長谷部以外、知らない事だ。
初期刀の意地だろう。秘密にしてやってくれ”
“分かりました”
“でも時々不思議なんだ。
あいつやたら頭を撫でるんだよ。
あーんな顔がいい奴が頭を撫でてきたら
失神するよなぁ。
………きっと、私に出会う前の本丸で、
頭を撫でる相手がいたんだろうな。
前の審神者は案外子供だったりして？”
───────────────
赤神さんから初めて切国さんのバグの話を聞いた時、
彼は切国さんが頭を撫でる癖について話してくれた。
それは、彼が唯一………覚えていた
大切な思い出だったのではないだろうか。
私は、辛い事はとことん忘れ去るようにして来た。
自分の心を守る為に。
だから思い返しても、思い出せない事もある。
父や母の事も覚えていない。
それはもう過ぎた過去で、
今の私にとってはもうどうでもいい話だが、
………大切な思い出でさえも、
昨日起きた楽しい出来事でさえ
一晩眠れば忘れてしまう切国さんは………
やはり、辛い事何だろうか。
『………』
切国「それで、あんたを買った奴は
“刀剣男士”だって事は確かか？」
ｵﾙｺﾞｰﾙ《はい。うちがこの口調になったんも、
その人が大きく関わってます。
変わった言葉を使うお人でしたわ》
切国「…………」
『？切国さん？』
切国「………一振り、心当たりがあるんだが」
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2021年2月27日 11時
