†参佰弐拾陸† ページ37
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『(外に出ましょう、大典太様)』
ごぽごぽと、気泡の音が聞こえる世界で、
私は呼び掛けてみた。
彼は何も答えなかったが、
私の声は聞こえているようだ。
姿が見えないのに、確かな確信がある。
『(出よう？)』
“俺は封じられるべき刀…………
俺がいたら、何も守れない”
『(でも、貴方を待つ人がいる。
それにここにいたら、勿体ないですよ。
折角、人の身を得たのだから……………)』
“駄目だ。お前も霊力に当てられていただろう。
もういい、何も求めたくないんだ”
これは…………かなり厄介だな。
声は聞こえているのに、
姿も見せてくれないとなると…………
ちょっと心配になってきた。
このままここにいたら、
きっと駄目のような気がする。
放ってはいけない気がする。
『(……………人が、嫌いですか？)』
“何……………？”
『(ここに閉じ込めた人間が、憎いですか？)』
“……………分からん”
“俺はただ、使われたかっただけだ。
刀として……………この身を打った意味を、
ただ、見出だして欲しかった”
“人は弱い……………だから、怖い”
“触れればきっと、壊してしまう”
その言葉は、人間に対しての怒りではない。
憎しみではない……………
ただただ悲しい。
私は刀ではないから、彼らの気持ちは分からない。
刀の在り方を知らない。
平和な時代に生まれ落ちた私は、
彼らの事は全ては分からない。
でも、人から生み出された彼らは、
人と同じ感情を持つ。
感情は、根本的に皆等しく同じ。
悲しい時は涙を流し、
嬉しい時は自然と笑みが生まれる。
同じなんだ。
『(人は、貴方が思っているより、
ずっと強い生き物だよ。
沫のようには消えたりしない)』
“……………”
『(だから、ここから出ましょう？
ここに一人は、寂しいよ。
私が、ここから出しますから)』
私は手を伸ばした。何もない空間に。
静かすぎるこの場所は、
私なら耐えられない。
彼は怖いだけなんだ。
ようやく見つけた安らぐ場所を失うのが。
でももう一度、もう一度だけでも見てほしい。
皆前へと歩み始めている。支え合っている。
今の本丸ならば、彼を一人にはさせないだろうから。
Aside〜end〜
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冷泉 雪桜(プロフ) - ％さん» 訂正しました！指摘ありがとうございます！！これからもよろしくお願いします！ (2019年11月15日 22時) (
レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
％ - いつも楽しく読ませて頂いております！誤字があったので、お知らせしますね。参佰陸の「見つけます」が「見つめます」になっています…。更新頑張ってください！応援してます！ (2019年11月15日 18時) (レス) id: 02aec80553 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2019年11月11日 7時
