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†漆拾陸†【片割れの章】“終” ページ37

語られる言葉には、
深い悲しみと怒りと後悔と…………
いろんな感情が乗せられていて。

抱えるには重すぎるほどの思いがあった。
でも、彼らが巡り会うのはもうない。
二度と、ないのだ。







和泉「…………情けねぇ俺ですまねぇな。
だが、ここまでこれたのはお前のお陰なんだ。
感謝してる…………」


『“兼、さん”…………』

和泉「………………審神者、頼みがある」








感謝の言葉で締めくくると、
意を決した彼は、折れてしまった
堀川国広の刀を差し出してきた。

その瞳は、最初に見た憎しみはなく、
真っ青の…………どこまでも高い空の色を示していた。
嗚呼、彼は決めたのだ。
その空を、飛び続ける事を。








和泉「堀川国広と俺を錬結してくれ」

『いいんですね?』

和泉「嗚呼」

『…………分かりました。こんのすけ』

こん《はいっ!》








私は彼のその瞳に答えるなければならない。
本当は二振りを一緒にいさせてあげたかった。
でも、それは出来ないから。

せめて彼らを裏切るような事はしないように、
私が出来る事をしてあげたい。
私が呼ぶと、こんのすけはポヒュンと現れる。
彼から作法を教えてもらって、準備を整えた。








『…………では、始めます』

和泉「頼む」








作法道理にやってみると、
堀川国広は御霊となり、和泉守様に吸収されていく。
それと共に、力が抜けていく感覚を覚えた。
堀川様が、私から離れていく。消えていく。








“…………審神者さん”

『…………?』

“ありがとう”







それはきっと空耳ではないだろう。
ふわりふわりと桜が散りばめて、
優しい風が私の頬を撫でる。

やがて静かに、堀川国広の御霊の輝きが消える。








和泉「…………お前の分まで強くなるさ」

『和泉守様…………』


和泉「“主”…………これまでの振舞い、
ここで詫びる。悪かったな。

あんたは国広の願いを叶えてくれた。
俺はそれに応えるつもりだ。存分に使ってくれ」


『クスッこれは頼りになるね』


和泉「ニッ…………当然だろ?

何たって、かっこ良くて強い、
最近流行りの刀だからな!」









ぺらぺらと私が座る横には
自動的にページが開かれている宣之言書(のりとごとのしょ)がある。

堀川国広の名前で止まったそのページには
“左三つ巴の家紋”の朱印が押されていた。
こうして彼の願いは果たされたのだった。

†漆拾漆† 【源氏・蛇の章】→←†漆拾伍† “黎明”



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冷泉 雪桜(プロフ) - ブドウ農家の一人っ子さん» 薄桜鬼からすっとんで来てくれてありがとうございます!薄桜鬼の方がネタ切れになって中々進めれる事が出来ませんが、これからもよろしくお願いします! (2019年8月28日 12時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
ブドウ農家の一人っ子 - 薄桜鬼のほうからとんできて一気読みしました・・・冷泉さんの作品は控えめに言ってどれも神ですね(語彙力の喪失) これからも応援しています!! (2019年8月27日 20時) (レス) id: 70ec3f117a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2019年8月20日 1時

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