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†漆拾肆† ページ35







堀川『それと、文を書いたんです。
薬研さんに頼んで置きました。

僕は、もう…………直接渡すことは
出来そうに無いから』






それから堀川は僕の側までやって来て、
泣きそうな、嬉しそうな笑顔で続ける。






堀川『兼さんの事、よろしくお願いします』

歌仙「堀川…………」

堀川『…………』

歌仙「ッ!」







そして糸が切れたように、彼女の体が崩れた。
慌てて抱き寄せた為、怪我なく済んだが、
少し息が粗い。微熱もある。

無理もない、霊力が強くても
その体は弱い人のそれなのだから。
閉じられた目は、しばらく開きそうになかった。


僕は抱えて、彼女を寝かせる。
…………もう時間がない。
堀川は後少ししかこの体に留まる事が出来ない。








歌仙「…………嗚呼、分かっていたさ。
彼女が誰よりも優しい事くらい。

初めてその手に触れてから、
傷が無くなり、暖かくなったのだから」









日だまりのような、天気雨か。
どんな所だろう。君が踏み留まりたいと願うほど、
居心地が良いのなら…………

僕もそこへ行ってみたいものだね。
彼の言う、悲しみが含まれた
優しい慈雨に打たれながら眠れば…………
どんなに安らぐだろう。

それこそ、雅なものじゃないか。









歌仙「“主”…………君は不思議な人だ。
あの人に、よく似て…………本当に…………」









もう会えない彼女の微笑み。
僕の庭を誉めてくれた彼女の笑顔。

僕はそんな彼女の最期さえ看取る事が出来なかった。
だからせめて、君の中にある悲しみの慈雨に
傘をさしてあげよう…………

君の為の、花を育てよう。
今度こそ…………愛した人の子を、信じさせてくれ。
今度こそ、守って…………みせよう。




_________________







歌仙「和泉守」

和泉「………………」


歌仙「この文は、薬研が僕から君へ渡した方が良いと
渡してくれたものなんだ。

受け取ってくれ、堀川の最期の願いなんだ」


和泉「之定…………」


歌仙「もう一度、信じよう。
彼女はきっと…………信じられる」









歌仙side〜end〜

†漆拾伍† “黎明”→←†漆拾参†



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冷泉 雪桜(プロフ) - ブドウ農家の一人っ子さん» 薄桜鬼からすっとんで来てくれてありがとうございます!薄桜鬼の方がネタ切れになって中々進めれる事が出来ませんが、これからもよろしくお願いします! (2019年8月28日 12時) (レス) id: 18535e1a43 (このIDを非表示/違反報告)
ブドウ農家の一人っ子 - 薄桜鬼のほうからとんできて一気読みしました・・・冷泉さんの作品は控えめに言ってどれも神ですね(語彙力の喪失) これからも応援しています!! (2019年8月27日 20時) (レス) id: 70ec3f117a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2019年8月20日 1時

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