佰捌 ページ29
鶴丸side
鶯丸「おそらく、先程言ったように
ここに来た経由は大体お前達と同じだろう。
だが、記憶は朧気ながら覚えている」
鶴丸「？さっき覚えていないと言ったじゃないか」
鶯丸「それは“本丸がどうなっているか
覚えていないか”と言う事に対してだ。
完全には覚えていないとは言ってないぞ」
燭台「鶯丸さん、君にはこれある？」
光坊はそう言って、手袋を外して例の数字を見せる。
鶯はそれを確かめ、自分の手の甲を見た。
鶯丸「………ある、ようだな。数字は“漆”だ」
切国「漆………やはりあるのか」
鶯丸「本丸については記憶がない。
ただ“失った”………事は覚えている。
大包平が………“折れた”事以外は」
鶴丸「大包平、が？」
鶯は静かに目を伏せ、少し顔を歪ませた。
大包平………鶯がいつもからかって、奴が怒って、
そのやり取りを、俺は見ていた気がする。
鶯はよく笑う奴だったが………
目の前にいる鶯は笑わない。
鶴丸「すまん、鶯。俺は大包平が折れた時のことも、
どこの本丸の所属だったのかも………
覚えて、いないんだ。
きみの話を聞いても、いまいちピンと来ていない。
すまない………どうにか思い出したいが」
鶯丸「…………鶴。先程の発言、撤回しよう。
“気にするな”、とは言ったがな、
お前は特に思い出さなければならない。
何が何でもだ。記憶は無いが、そんな気がする」
鶴丸「！きみは、やはり何か知っているのか」
鶯丸「さあな。詳細は気にしない主義だ。
ここから俺も同席させてもらって構わないか。
丸腰のお前達よりかは
お飾り刀でも多少は役立つだろう」
鶴丸「ゔぅ……ひ、否定はしないが………」
鶯丸「俺がこの祭りに参加したのは、
あの“蛇赦”とか言った蛇妖怪の“刺客側”として
競技に送り込まれたからだ。
同胞殺しをあの蛇妖怪は楽しみたいんだろう。
が、お前達と行動を共にしたほうが
俺としても、お前達にとっても、
都合が良いと俺は判断した。
お前達の本体は最終の難関にある。
それまでは守ってやるさ」
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年7月21日 18時
