玖拾捌 ページ19
Aside
………前も、こんな感じやったな。
皮肉にも聞こえる妖怪達の歓声に、
うちは思わず目を伏せた。
嫌な歓声や。全く嬉しくない歓声は
ここしか無いと思う。
うちらは大きな祭壇に出た。
祭壇には他にも囚われた下級の妖怪、
ちらほらと発狂しとる人間もおった。
そして中には“この祭がどんなものか”を
知らない無知な妖怪もおるようやった。
可哀想に。この祭は普通やないってのに。
《《悲鳴を聞かせろぉぉぉ！！！》》
《《血を見せてくれ！！》》
《《おお？今回は付喪神があんなにも！！》》
《《あっしはあの付喪神に賭けるぜ！
生き残ったら、あれを喰いてぇ！！》》
燭台「………ご指名が入ったみたいだね、山姥切君」
切国「笑えないな」
燭台「はは、流石にこの状況下での
ご指名は嫌だよね」
『(…………逃げ出すには)』
うちは歓声に目もくれず考えた。
どうしたら兄さん達を逃がせられるか。
………兄さん達が本体を奪われとるって事は、
多分“最終地点”に兄さん達の本体がある。
その最終地点までに、兄さん達を守り切って、
生き残ることができれば…………
この祭りから逃げる事が出来るかも知れへん。
前もそうやった。そこで………
“A………”
“ご、めん。君を、守れな………か、”
“逃げ、て………く、れ……”
『(！！！)』
そこまで考えて、嫌なものを思い出してしもうた。
それを振り払うように頭を横に振った。
あかんわ………ここでの思い出が
ろくな事が無さ過ぎて、ネガティブな方向に
考えが行ってまう…………
燭台「妖魔君」
『！あ、嗚呼………燭台の兄さん、どしたん？』
燭台「………これから何が始まるの？
君は何か知っているんだろう？」
『…………』
燭台の兄さんが声をかけてきた。
相変わらず感情が読めなくて、
濃い琥珀色の瞳がうちを捕らえる。
『…………始まってから伝える。
ここやと、誰かに聞かれたらまずいから』
燭台「都合が悪い事でもあるのかな」
『ちょっと、な。ちゃんと始まったら話すよ。
今は何も聞かんで兄さん』
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年7月21日 18時
