玖拾漆 “生き地獄ショー” ページ18
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一期「鶴丸殿………あの、彼女は？」
朝霧の指示により、俺達は連れ出された。
その最中、少し躊躇いながらも
横にいた一期が小声でそう俺に問いかけてくる。
一期の言葉に再度俺は前を歩くAを見た。
顔色はまだ良くはないが、
あの再生能力は幻ではないようだ。
着物に血が付着していたものの、
傷らしきものはない。
鶴丸「…………見ての通り妖魔だが、
俺達に手を貸してくれた者だ。敵じゃない」
一期「敵、ではない、と？
しかしあの再生の力は並の妖魔ではありません。
彼女からはとても強い力を感じます。
ですが不思議と禍々しさはない………
寧ろ、とても澄んだ空気を纏ってますが。
本当に………彼女は妖魔と呼べる存在なんですか？」
燭台「さあ………それは僕らも分からないかな」
一期「え？」
切国「………ただ分かるのは、彼女は敵じゃない。
目的は分からないが、
何度も俺達は彼女に助けられた。
この都に辿り着けたのもあいつの案内でなんだ」
一期「！？………それは本当に、
信頼に置ける者なのですか？
案内の名目で、皆さんをハメた………
と言う事はありませんか」
鶴丸「………………それは、ないと俺は思っている。
ハメる気ならば、己まで捕まる必要もないだろう。
それに…………」
一期「？それに？」
鶴丸「…………記憶が無い中で言う事もなんだが、
あんな、泣きそうな顔をするような
妖魔は少なくとも………俺は見たことはない。
あの顔は………あの顔はくだらない戯言如きで
作れるものではない」
俺達は彼女を知らない。
何が彼女をあんな顔にさせているのか、分からない。
彼女の言う“失った仲間”だろうか。
Aの先程からの口振り。
恐らくAはこの都で
行われている“祭”とやらを知っている。
“祭”で“何が行われているのか”も………
多分知っている。
あの飄々とした彼女が、取り乱した様を見せた。
Aは隠しているつもりだろうが、
俺の前を歩く彼女の背中は酷く小さく見えた。
朝霧《さて、着いたぜ。頑張って生き残りな？》
そして暗い道のりを歩いて、
辿り着いたのが………大きな祭壇。
歓声を上げる妖怪共の視線が出迎えた。
鶴丸side〜end〜
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年7月21日 18時
