肆拾捌 ページ9
しかし………先程から気になっていたんだが、
隣にいるこの光坊は本当に俺が知る
燭台切光忠なのか。
燭台切光忠とは、物腰柔らかな奴で
常に笑みを絶えないような刀だ。
それはどの本丸も皆同じ筈なんだが………
目の前の光坊は口調こそ光坊だが、どこか違う。
あんな冷めたような目はしない。
作ったような笑みをたたえ、
考えている事が全く分からん。
燭台「！………どうしたの？鶴さん」
鶴丸「………いや」
『瘴気が濃くなって来たな。
兄さん達、ガシャドクロが徘徊しとるかも知れない。
足元気をつけてな。もう少しやから』
光坊に対する違和感が拭えないまま、
俺達は先を急ぐ。
そうしている間に、都の外へ続いているであろう
山道らしき道が見えて来た。
…………筈だった。
切国「！鶴丸っ！！」
鶴丸「！？」
ドンッと、背中に衝撃を受け、
俺は体制を崩した。倒れ込む瞬間に見たのは
俺を突き放す体制だった山姥切の姿だった。
そしてその光景を見た直後、
無数の鋭い槍が地中から飛び出し………
ザクザクッ！ドシャッ！！
切国「………」
鶴丸「山姥切っ！！？」
『兄さんっ！！』
山姥切の体を貫いた。山姥切の布や衣服は
あっと言う間に赤く染まっていく。
しかし山姥切は吐血しながらも、
俺の姿を見て安心したように口角を上げていた。
山姥切は俺を庇ったのだ。
『に、兄さんっ！！切国の兄さんっ！！！』
鶴丸「(いや、息はある………急所は避けている。
まだ救えるはずだ)」
燭台「！！敵が来たよ二人共。
まずここを切り開かないとっ」
鶴丸「ﾁｯ待ってろ山姥切っ！！」
俺や光坊が抜刀したのと同時に、
地中から骨の腕が伸び、
ガシャドクロ共が這い上がってきた。
良くもまあやってくれたもんだ。
燭台「君は下がってて」
『ｯ………』
鶴丸「Aっ」
『だ、から………嫌なんよ……
戦うんは、嫌なんよ………！！』
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年7月6日 12時
