漆拾漆 ページ38
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太鼓「………？なあ主、何か本見つけたぜ」
七緒「？本？」
太鼓「ほらよ」
ふと、太鼓鐘が足元に倒れてきた本を拾い上げる。
埃っぽく、紙も黄ばんだ本だった。
太鼓鐘は先に見ることなく、俺に渡して来る。
これは、何だろうか。
七緒「何だろうね」
太鼓「見りゃ分かるだろ？見てみてくれよ」
七緒「…………誰かの日記だね」
蜂須「日記？」
七緒「誰のかは………書いていないね。
文字的に妹のものじゃないから、
刀剣男士の誰か、かな………」
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なんてことのない、他愛のない………
日常について書かれている。
しかしそれらの日記は少し変わっていた。
その日の出来事を一、二文書いた後に
短歌が書かれていた。
内容は日記と同じようなもの。
やれ畑仕事が嫌だの、料理が巧く仕上がっただの。
そんな、本当に些細な事ばかり。
しかしその字は滑らかに、そして優美なもの。
まるでゆったりとしたその日常を
そのまま筆跡に残した様な。
しかし、後半につれて………
短歌は減って行った。
あんなに優美な字だったのが、
段々と切羽詰まったような、
書き殴ったようなものへとなる。
そして、証拠を隠蔽しようとしたのか、
最後の数ページは墨で真っ黒になっていた。
読める文だけ読んでみると、
意味深な事が書かれている。
“あの一件があってからしばらくして、
“彼”は徐々に変わり始めた”
“最初は彼の好奇心によるものかと思っていたが、
あの“彼”があんな品のないような事をするだろうか”
“今日も彼の様子がおかしい。
やはりあの一件が良くなかったのではないか”
“何故、こうなってしまったのだろう”
“アレはもう、我々が知る“彼”ではない”
“何と言う事だ。彼を救うにはどうしたらいい”
“これが最期の記録となるだろう”
“自分にはやらねばならない役目がある”
“主を守らなければ”
“どうか、主が無事であるように”
“この日記を読んでいるのが、
無事に生き延びた主であるよう希望を兼ねて”
“君に幸あれ”
“君が為 たとへこの身が 果つるとも
士魂帰らん 共にありけり”
(例え僕が戦って死んだとしても、
僕の魂は君の下へ帰り、君と共にある)
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年7月6日 12時
