伍拾参 ページ14
･
鎌錆《………で、そこの娘は？見た所妖魔だが》
すると鎌錆はAを指差しながらそう告げた。
それまで黙っていたAは、
ゆるりといつもと違って優雅に振り向くと
手を着いて頭を下げる。
『うちはお刀様をご案内する妖魔です。
九十九神殿………お刀様をお救い下さり、
感謝致します』
鎌錆《おやおやお刀様もいい下僕を見つけたな。
喰って力にする非常食か？
嗚呼いや………お刀様となれば、試し斬り用か》
鎌錆の言葉に、俺は思わず
しかめっ面をしているだろう。
妖魔より九十九神は位は
上だと言ったような言い草だな。
AもAで自分の身を
引いているような態度だ。
鎌錆《まあいいさ。積もる話もあるだろう？
ゆっくりしててくれ。何かあったら
店の方に来て呼ぶといい》
そう告げると鎌錆は部屋を後にした。
『……………はー、行った行った。
嫌やわー、やりにくったらありゃせんよ』
燭台「………この都だと九十九神が上なんだね」
『そうそう。一応“神”やからな。
他にも色々と神格のある妖魔はいるで。
宇治の橋姫、般若、天狗………
ああ、最近話題なんは犬神っちゅう、
また達の悪い妖魔が居て───』
鶴丸「辛くないのかい」
『………鶴の兄さん？』
鶴丸「そこまで自分を卑下する必要も無いだろう。
きみは、辛くないのか」
『…………ふふっ』
Aは俺の言葉に
キョトンとした顔で聞いていたが、
やがておかしそうに笑った。
あの悪戯っぽい笑みでは無く、
穏やかな微笑だった。
『兄さんって、意外と優しいなぁ。
もっと図太い付喪神やと思ってたんに』
鶴丸「俺をなんだと思ってたんだよ」
『あはは。大丈夫やで。
苦じゃあらへんから。辛くないよ』
鶴丸「…………」
その笑みが、どこか切なかった。
鶴丸side〜end〜
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 39人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2020年7月6日 12時
