【刀剣乱舞】その縁、巡りゆく定め (ページ22)

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†漆佰陸拾壱† ページ22

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稲荷《………私が知るのはここまで。
私が九重に“忘却の術”を施した。

人は、泣いた後で立ち直る為に
忘れるだろう？それは神々が人の罪や
悲しみを忘れさせているからだ。

故に、呪いを忘れさせた。
来たる日まで………彼女を生かすために、
彼女の父親は私に生き血を捧げたよ》

私が話し終わると、刀剣の神々は
沈黙を強いられたように、
私の言葉に耳を傾けていた。

大包「………気に入らん」

鶯丸「？大包平？」

大包「それはただの自己満足に過ぎない。
九重の父親は何を考えている」

小烏「これ、子よ」

大包「小烏丸、黙っていろ。
いいか、それは大きな間違いだ。
血を捧げるだと？忘れるだと？笑わせる！！

命を削るのが人の生だ。人の業だ。
決して忘れてはならない。
そんなもの、あってはならない」

稲荷《………ほう？私が間違っていると？
血を捧げた九重の父が、間違っていると？》

大包「そうだ！！！」

燭台「ちょ、大包平さん！？」

すると一振りの刀がそうハッキリと
私の言葉を否定した。
辺りの刀剣を押し退けながら、彼の者は続ける。

大包「貴様は人間が哀れだと言ったな。
だが、そうは俺は思わん。

忘れる事で人は突き当たった壁を
乗り越えると言ったな。それも間違いだ。
人は残すことで、命を繋ぐのだ。

あれは仮にもこの大包平の所有者。
呪い如きに死ぬような奴ではない」

稲荷《…………》

大包「貴様は言った。
“呪いは死への執着心により進行を早める”と。

何故今、奴は本丸を離れたか？
それは奴が生きようと足掻いているからだ。
生きて帰るために、運命を覆そうとしている。
その足搔きを、忘却と言う術で！
奴の父親と貴様が踏みにじったのだ！！

あいつを信じようとしていない時点で、
貴様は神を名乗る資格などないわ！！！」

稲荷《！………く、ｸｸｸｸｯ……
くはははははっ！！！》

一振りの刀剣の言葉に私は笑った。大いに笑った。
嗚呼なんと傲慢な奴だ。
私の加護を、間違いだと抜かすやつは始めてだ。
神を裁く者など、居やしないと思っていたが、
まさか刀剣の付喪神に言われるとは。

大包「何がおかしい貴様ァ！！」

燭台「お、大包平さん落ち着いて！」

稲荷《はは、は……はぁ……笑った笑った。

そうか、間違いか。私はどうやら人間の力を
忘れていたようだ………》

そうだった、君達は人が“残した物”だった。