弐拾伍 ページ7
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今日は七夕。
町では七夕のお祭りで賑わいを見せている。
綺麗に彩られた笹が、あちこち見られた。
そんな街中を、ランプを持ちながら歩いていく。
勿論、あの人の所に行くために。
『【こんばんは。お邪魔します】』
「夜に来るなんざ珍しいなァ」
『【今日は七夕ですから。一緒に星を見に行きませんか。
お昼、星がよく見えそうな場所を探していたのです】』
「七夕………嗚呼、もうそんな時期か。
そういえば、最近町が賑わってると思ったらァ、
七夕の準備していたんだな」
『【どうですか。行きますか】』
「………待ってろォ」
─────────────────────
町中を抜け、蛙や虫の声、そして私と彼の足音だけが
聞こえる畑の中を歩いていく。
空を見上げれば、満天の星空が見えた。
街中だと明るくて良く見えなかった星がよく見える。
「星がよく見えるなァ」
『…………、』
「………なァ、お前は何でここまで俺に構うんだ？
いつもいつも、毎日俺ん所に来て。
ただのお節介にしちゃあ、
そこまで前に出てくるわけじゃねぇし」
『！』
「昨日、雨降ってた時だってそうだ。
お前、人に声掛けンの苦手だったりするだろォ」
わ、分かっていたんだ………
図星を言われて、先を歩いていた私は思わず足を止め、
彼の方へと振り向けば、手を込んでこちらをじっと見ていた。
『………【ごめんなさい。本当は、貴方に助けてもらった時、
貴方の事を知りたいと思った。あれっきりの関係じゃなくて】』
「？それだけか？」
『………、』
「………そうか」
『【やはり迷惑でしたか】』
「迷惑ならとっくに追い出してらァ」
そう言いながら、彼は続けて口を開いた。
「“不死川 実弥”──俺の名前」
『…………ァ、』
「知りたかったんだろ。
それからいつまでも“お前”はその………俺も呼び辛ぇからよォ」
『………【A】』
「A、な。七夕ってんなら、
お前は願い事でも書いたりしたのか？」
『【私は何も。実弥さんは】』
「欲しいもんはねぇんだ。俺ァ今の俺で満足してる」
『【私と同じ、ですね】』
今年の七夕は、今までの七夕よりも、
もっと、ずっと………特別なもののように思えた。
『【また、明日会いに来てもいいですか】』
「好きにしろォ。どうせ来るだろ」
優しい、思い出が出来た気がした。
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作者名：冷泉 雪桜
| 作成日時：2023年7月1日 1時
