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翌日になっても、彼は目覚めない。


時々本当に生きているのか心配になる。
あまりにも静かに眠るものだから、
夜中に起きて、たまに呼吸を確かめるほどだ。


自分が知らない所で、一人静かに死んでしまわないか。
そう、思わない日はない。




ただただ、生きて欲しいと祈るばかりだった。










部屋を掃除しても、この家は汚れなんてほどんど無くて、
彼の几帳面な性格が見て取れた。

中庭の地面がやや凹凸があるのは、
そこで彼が何度も何度も、剣を振るって
稽古をしていたから、というのが分かった。


好きで見たわけでは無かったが、
時々、拙い字が書かれた紙が出てきた。
彼は字を書くのが上手く出来ないようで、
練習をしていた形跡もあった。


………着物も出てきた。
背中に刻まれた「殺」の字がある白の羽織。
紫の、ボロボロになってしまった着物………

白の羽織は彼のもので、
紫の着物はきっと………彼の大切な人のものだっただろう。








部屋を見る度に、貴方に関するものが出てくる。









それを見る度に、とても切ない気持になって、
同時に彼の生き方に憧れや希望に似たものを感じた。












『(実弥さん、もうすぐ七月も終わりますね)』

「…………」


『(これから少しずつ、秋に色づいていくのでしょうね。
まだ暑い日は続きますが、永遠には続かない。
次の季節がやって来ますよ)』


「…………」














だからきっと、貴方も──













リーン………チリーン………












僅かに秋の気配がする風が、風鈴を優しく撫でた。

陸→←捌



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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年7月1日 1時

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