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桜雲「ッ………」
こんな時だってのに、こんな事を思い出すなんざ。
俺は目の前にいる女を相手に、刀の柄に手を伸ばしていた。
何てエゲツねぇ気配をさせる奴だ。
確実に目の前に居るのは鬼。しかも、かなり強い。
《あんた、鬼狩りなんだろ。柱ね》
桜雲「そーゆーあんたは上弦の鬼だな?」
《へぇ……?結構気配を隠すの得意なんだけど………》
桜雲「うちは元歌舞伎役者。女役を華麗に熟した、色男よ。
相手がどんな役者だろうが、一目で分かる」
《ふぅん?そうねぇ。確かに………
今まで見てきた馬鹿な不細工共よりもずっと美しいわね。
特にその瞳………気に入ったわ。えぐり出して喰ってやるよ》
たまたま歓楽街に来ただけだったってのに、
幸運か、不運か。まさかの上弦に出くわすとは。
柱でさえも上弦に出会う確率が低いってのに、
こんな偶然あるのか?
しかも遊女だったって??そりゃ見つかりやしない。
気配も全く分かんなかった。
俺がこいつを上弦だと見破れたのも、
演じ方の癖を見たからであって。
くそったれ。こんな公な所で出くわすとは。
桜雲「(こんな人が多い大通りでの戦闘はまずい)」
堕姫《周りの人間が気になるのかい?馬鹿だねぇ。
周りを気にしてる場合?》
勝てるか?こいつに。
花の呼吸の適性を持たない、この俺が。
………いや、上弦に出くわした事で弱気になったな。
らしくねぇ事考えちまった。
死ぬ覚悟は何時だってある。
俺は、桜のように堂々と生き、
死ぬ時は見事に散ってやるとも。
俺は自分の美しさに誇りを持つ、花柱・桜雲虎之助。
努力し、強くあろうとする自分が、何よりも美しい。
自分の生き方を貫き、堂々と生きる事を選んだ
美しく輝く俺の生き方が間違いだとは、言わせない。
言わせないっ!!
桜雲「俺の名を覚えとけよ上弦の陸。俺は花柱・桜雲虎之助。
これより始まるは、桜雲虎之助による幕引き!
ケレンなる演技をとくと見よっ。
そして刻め、我が桜花爛漫たる花道を!!」
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年6月22日 15時