佰弐拾壱日 ページ40
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「お勤め、ご苦労さまでした。風柱様」
小鳥遊邸に戻ると、出迎えてくれたのは中澤殿だった。
中澤殿は丁寧に頭を下げ、私の荷物を預かってくれる。
………別に、使用人みたいなことをしなくていいと、
何度も言っているが、中澤殿も頑固である。
一部の柱が所有している屋敷には、
使用人のように働く隠もいるのだが、
私は一人の方が落ち着くので、任せては居ない。
私は小鳥遊の人間として隠の統括を任されているだけであり、
使用人のような事をしてほしいわけではないのだが………
『出迎えはいいと言ってるのに………
君は鎹鴉の世話係兼管理者だろう?』
中澤「ご自分で家事ができるのです?」
『いや………出来ないわけじゃないんだよ?
不器用で出来が悪いだけで』
中澤「洗濯物だってきちんと畳めたことないじゃないですか……
料理も味は悪くなくても、
上手く片付けられないではありませんか」
『…………』
否定できない………
私は家事は確かに出来る。出来栄えが悪いだけで。
中澤殿は几帳面で真面目だから、放って置けないんだろうな。
毎度何故か整っている洗濯物とか
見る度に申し訳なくなってくる。
私は今日も諦めて、荷物を中澤殿に預けた。
『………ふぅ。監査部隊長を呼んでくれないかな。
それから、花京屋敷に派遣していた隠もここに集まるように。
桜雲殿の遺体の調査の結果を聞きたい』
中澤「!は、はい」
『桜雲殿は歴代の柱の中でも長く鬼殺隊に居た人物だ。
ただで殺られたとは思えない。何か情報を掴んでいるはず。
調べればきっと何か出てくる』
私はそう言いながら羽織を脱ぎ、
懐から数枚の文を取り出して中澤殿に手渡した。
『鴉を飛ばし、桜雲殿が殺られた周辺に居た隠に通達。
知っていることを私に報告するように指示を。
三日後、私は手が空いているから、
小鳥遊邸に来れる者はなるべく直接来るようにと』
中澤「!はい。分かりました」
『すまないね、いつも助かっているよ』
中澤「お力になれるのであれば、幾らでも。
では行ってまいります」
『うん、気をつけて行くといい』
桜雲殿の身に当時何が起きたのかを突き止めなければならない。
そこから上弦の情報を炙り出す。
悲しむ時間は後でいい。
今は、彼の死が意味あるものに………
彼の死を、無駄にしないために。
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年6月22日 15時