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佰弐拾肆日 ページ37







「!!………はいっ。
現在、花柱・桜雲様の首は、この町の少し外れに位置する
橋にて晒されています。

既に一般の通行人によって警察に通報されてしまいまして………
市民の命を優先にし、警察の足止め、
及び、火事が起きているとして、市民の避難を終えております」



『良い判断だ。引き続き、周囲の警戒を。
いいかい?絶対に橋に近づかないように。
相手は上弦。既に姿を消しているとしても、
油断してはならない。何かあってからでは遅い』



松井「承知しましたっ」








………よし。これで市民の安全は確保された。
何かあってからでは遅い。
人を守りながらでは流石に私も動けないからな。

周囲を警戒しつつ、私は橋へと向かった。








─────────────────────







報告の通り、彼の頸は橋の手すりに晒されていた。
血が滴り落ち、川の一部を赤く染めている。

昨晩の出来事だな。
本当に、ついさっきの出来事だったらしい。
周囲は戦闘の跡があった。


………地面や橋につけられた切り口は、
鋭利な刃物のように見えたが、ガサツだ。
刃物ではない。かと言って爪でもなさそうだ。

上弦の陸は一体、どんな血鬼術を………?












『………迎えに来たよ。桜雲殿』










私は桜雲殿の頸に近づく。
彼の自慢の髪は綺麗にバッサリと切られており、
左目の眼球を失って、右目は真っ直ぐと見据えていた。
どこを見つめていたのだろう。
最後に、その瞳には何を映してたのだろうか。
瞼を閉ざそうとしたが、何故か出来ない。

口には煙草を加えていた。











『………君、煙草は辞めていたんじゃなかったのかい?』










勿論、返答は無かった。









─────────────────────






死ぬときは、目の前のモノに念を送る。
そうすりゃあ、念を送ったモノに魂とやらが宿るんだと。
そして、それと共に魂は生きるらしい。信じちゃいないがな。

俺は空を見るんだ。宿るのは空がいい。
誰だってそうだろ。陽の光を見たい。


俺は桜のような生き方をしたい。
日の下で輝く、桜のように──






─────────────────────










………以前、遺書の内容を聞き合った時、
彼はそんな事を言っていた。

その瞳は、空を見ていたのだろうか。
いつか来る、鬼の居ない………美しい黎明を見るために。




不思議だ。君はもういないのに………
その桜色の瞳はまだ生きているように、輝いていた。

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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年6月22日 15時

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