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佰参拾参日 ページ28

そこから、粂野殿はハッと顔を上げた。
焦りと心配の感情………

成程。私を思ってか。
健気な弟子に私は笑って頬杖をつく。








『大丈夫、君の今の感情を読んで、不快には思ってないよ。
むしろ、君のその反応が正しいんだ』


粂野「いや、俺そんな、つもりじゃ………」

『ふふふ、おかしな子だね。私に嘘は通じないよ?』

粂野「ッ、…………」


『大丈夫、それが普通だ。君は、普通の子だよ。
普通の、優しい人だよ。
私の事を、理解しようとしなくていいんだ』











鬼に対して、憎悪を向けるのは当たり前。
普通のことだ。人であれば、それは普通のことなんだ。
鬼に対しても同情をし、更には鬼を庇うような事を言う
私は、異常者で変わりないだろう。

鬼は滅せなければならない。
それを理解した上で、慈しみ、尊く感じ………
愛情にも近しい感情を持つ私は──きっと………異物なのだ。


粂野殿が、泣きそうな顔で私を見ている。












『………ごめんよ。困らせたね』

粂野「い、え………なんか、俺こそすみません」


『だから気にしなくていいって言ってるのに。はははっ!
──君が、初めてだったよ』


粂野「?何がですか」


『この話をして、否定しなかったの。
幻滅しても良かったんだよ??』


粂野「………俺が、貴方を尊敬してる理由と、
ソレは関係ないでしょ……それ含めて、師範ですから。
というか、いつも何でも肯定して、
他人の考えや煩悩に対して寛容的だし………
そういう所、師範らしいとは思うけどな」


『………ありがとう。そう言ってくれると、嬉しいよ』











つくづく思うよ。
私はやはり、鬼殺隊に向いていない。
それでも、敵味方、善人や悪人、人と鬼、
他者の考えや思惑など、関係ない。

私は自身の意志、考えで行動し、したいように鬼を屠る。
人として鬼は許さないし、滅する。
しかしこの戦いの先で………
いつか、鬼がいない世界になるように………


そう、同じく悲しみを産まないためにも。
私は私の意志で、目的を果たす。












粂野「!夜明けだ」

『本当だ。一緒に帰ろうか、粂野殿』

粂野「師範は帰ったら寝てくれよな」

『え、まだ仕事が………』


粂野「絶対柱がやんなきゃいけない仕事ばかりじゃないだろ?
もっと頼ってくれても良いのにさ」


『………そうだね。なら、帰ったら担当を分けないと』

粂野「しーはーんー?」

『それが終わったら大人しく休むから。ほらほら、行くよ』










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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年6月22日 15時

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