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佰参拾伍日 ページ26










粂野「師範もこの辺で任務を?」


『嗚呼。柱の空席を埋めるためにね。
今、一部の柱は遠征に出ていて、
彼らの分も私が担っているわけだよ』


粂野「え……それって、大丈夫なのか………?」


『今の所は大丈夫だよ。柱でなければ出来ない仕事もある。
………でもそうだね、今は体を休めていた所だったんだ。
休憩を挟みながらやっているんだ。問題ないさ』


粂野「………師範のそれ、俺あんま信用出来ないんだけど」










粂野殿がジッと私を凝視している。
………参ったなぁ。その顔をされると私も弱い。
中澤殿にも面目ない事をしたが………いやしかし柱として
やらねばならないことではあったし………

困った困った………いたたまれない。
敬語も外れてきてるし………
粂野殿から感じるのは”心配“と僅かな”怒り“。
これは………心配が大きく勝った怒りだな。
結構ご立腹のようで、彼はむっすりとしている。










粂野「あ、今理解してるでしょ、俺の感情」

『や、………えーっと、まあ、うん………』


粂野「あのなぁ、俺はあんたのこと
目茶苦茶信用してるし、敬愛してる。
俺とほぼ歳変わんないのに、あんためっちゃ強いし。

でもあんたのそう言う所、本当に悪い所だぜ?」


『………そ、う……だね?』


粂野「”そうだね“じゃないんだよ。実際そうなんだよ。
全く………俺の身にもなってくれ。
見ててたまに気が気じゃないんだ」


『………』










「あー!隈も出来てるじゃないか!」と、粂野殿は
私の目を覗き込んだり、
私の体に異常がないかを確認したりする。

そんな粂野殿の様子を見て、私は懐かしい気持ちになった。










『………君は世話焼きだなぁ』

粂野「それ、そっくりそのまま師範に返しますけど?」

『ふふ、君は確か家族に兄弟が居たんだったかな』

粂野「?そうですが」


『君を見てると、懐かしい気持ちになるんだ。
私にも兄が居たんだよ』


粂野「それは、初耳だな………
あんたあまり自分の事話さないから」


『聞いても気分の良いものじゃないからね。
湿っぽいのは、どうにも慣れない』


粂野「………まあ、ここではよくある話ですよ」

『んー?なんだ、聞きたいのかな?』

粂野「そりゃあそこまで話されたら気にはしますけど」


『それもそうだね。なら、夜明けまではまだ時間があるから、
聞かせてあげようか。』













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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年6月22日 15時

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