佰肆拾日 ページ21
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『………大丈夫かい?』
杏寿「ハァハァ………大丈夫、です!!」
『おお、声は元気だね』
小鳥遊屋敷の敷地内にある訓練所。
杏寿郎殿は仰向けに倒れ込み、呼吸を荒くしていた。
………年下に大人気なかっただろうか。
いや、手を抜くなと言われていたからなぁ。
へばってしまっている杏寿郎殿の顔を覗き込むようにして、
声をかけたが、汗だくにも関わらず声は良く通った。
『終わりにしようか』
杏寿「ま、まだまだ!」
『駄目だ。それ以上は君の体力が保たないよ。
ほら、立つのもしんどいだろう』
杏寿「むぅ………」
『それにしてもしっかりと炎の呼吸が使えているじゃないか。
これを煉獄家の書を読んで実行し、会得したんだって?
これでは直ぐに私も追いつかれそうだ』
杏寿「そうだ、ろうか………っ、
しかし、俺はまだまだ、貴方には追いつけていない……!
小鳥遊殿は流石だ!呼吸が一切乱れぬとは………!
俺の動きは、何処がいけませんでしたか!?
ご教授、願いま、す………!」
『それよりまず呼吸を整えようか。
落ち着くまで待つから、ゆっくり深呼吸をするんだ』
私がそう言うと、杏寿郎殿は素直に従い、大きく深呼吸をする。
しばらくして彼の呼吸は荒いものから
落ち着きのあるものへとなる。
その様子を見て、私は口を開く。
『君は刀を持つ手が力み過ぎているんだよ。
変に力が外へ流れてしまっている。だから息も続かない』
杏寿「!」
『動きは良かったよ。私の技よりも威力は君の方が勝るだろう。
実力も場数を踏めば君は私よりも強い。
でも、君の場合はまだ刀に力が乗り切っていないんだ。
勿論君が扱う炎の呼吸は攻撃に特化しているから、
他の呼吸よりもより力が必要だし、
体内に取り込む空気も多く必要となる。
しかし、力が逃げてしまっていては話にならない。
刀に力を与えるんだ。体全体で、集中する』
杏寿「体全体………成程!!」
『そうすれば、自ずと呼吸が続くよ。
体力も保てるようになり、威力もさらに上がるだろうね』
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年6月22日 15時