佰伍拾捌日 ページ3
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末鋼「………ふむ。風柱は刀を丁寧に扱ってくれるので助かる。
今回も刃こぼれなし………素晴らしい剣の使い手だ」
『買いかぶりだ』
小鳥遊邸に戻り、早速私は末鋼殿に刀をみてもらう。
私のは二刀流でしかも私は左手と右手で振るう癖が違う為に、
私の手に合わせて末鋼殿は刀を打ってくれているため、
とても腕のいい職人だと感じる。
風の呼吸は本来、一振りの刀で扱うもの。
しかも普通の剣術で考えても二刀流は難しいとされる。
刀というのは片腕で扱えるようなものではない。
二刀流を扱う者は手ブレのない
十分な握力を必要としているのだ。
それに加えてそもそも私は剣術を扱えるほどの
強い体ではなかった。
しかし、それでも私は二刀流を扱っている。
柱にまで上り詰めたのも、
剣術の”技量“のみで通用していたと言っても過言ではない。
二刀流であれば不利な事も多いが、
逆を言えばその分、発揮出来ることがある。
私の場合、体力や純粋な力では到底鬼などに敵わない。
自身の体を守るには、剣術の形を変える必要があった。
そのため一刀流ではなく、
防衛に特化している二刀流を扱っているのである。
そうすることで、今日まで私は生き延びてきた。
戦い方は人それぞれ。己に合う剣術が、一番の強みとなる。
『刃こぼれが無いのは、前線に出ていないからだろうに』
末鋼「刃こぼれが無いのは刀の本質を感覚的に捉え、
真っすぐと刀に力を乗せて斬れている証拠だ。
扱う人間によって、刀は応える」
『刃の呼吸の使い手に言われると説得力があるね』
末鋼「…………」
『…………なあ、末鋼殿』
末鋼「なんだ」
『かの有名な五箇伝などの刀工の流派とは別の、
歴史の裏にて密かに語られてきた、
鬼狩りの為の刀を打つ為の刀派──日輪伝。
君は大昔から存在する日輪伝の刀鍛冶の末裔。
鬼狩りの組織が出来て役千年………そんな途方も無い時間を
君達刀鍛冶の里の人々が絶える事無く
語り続けてくれたおかげで、今の私達がある。感謝しているよ』
末鋼「それが我々の仕事だからな。
──時代は変わった………廃刀令とかいう法令のおかげで、
旧武士たる士族は行き場を失った。
おかげで、人と人が刀で争う時代ではなくなり、
武士の魂………士魂は、時代と共に薄れていった。
同胞の刀鍛冶も減りつつある」
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年6月22日 15時