佰肆拾壱日 ページ20
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『紅焔を預けたい。いいかい?
小鳥遊屋敷に居たくないと駄々こねててね。
この家で過ごしたいんだろう。預かってくれるかな』
杏寿「!承知した!紅焔、こちらに来い!」
紅焔《カァ》
紅焔を手渡し、杏寿郎殿の肩に紅焔が止まる。
その時、正門が僅かに開いた。
中から幼い少年がひょっこりと顔を出す。
「あにうえ?戻ったのですか……?」
杏寿「千寿郎!今戻ったぞ!!」
千寿「お帰りなさい、あにうえ。………あ、風柱様……
先程帰ったばかりだと思っていたのですが………?」
『嗚呼、そうなんだが………
紅焔が私に着いてきていたみたいでね。
正門で立ち尽くしていたら、紅焔が来たんだ。
羽を痛めてるから小鳥遊屋敷で休むように言ったんだが、
紅焔はここに居たいそうだから、置いてもらえるかな。
紅焔用の傷薬も渡しておくよ』
千寿「そ、そうだったのですね。お薬、ありがとうございます」
杏寿「いつもありがとうございます!!」
ペコリと二人は頭を下げ、感謝を口にする。
その様子から育ちがいいのがよく分かる。
以前は煉獄殿も二人に熱心に向き合っていたのだろうな。
二人から、寂しさを感じる。
仕方ないことだが、その姿が痛々しくも見えた。
『では、そろそろ行くよ。父君によろしく伝えてくれ』
千寿「は、はいっ」
杏寿「小鳥遊殿!お待ち下さい!」
『ん?』
杏寿「宜しければ俺の稽古に付き合ってくれませんか!!」
『え?いや、君は今出稽古から戻ったのではなかったか?』
杏寿「この後もまた素振りをする予定でしたので!!
他の柱達とは会うことが殆ど無い!
定期的に交流のある小鳥遊殿しか知らない俺は、
柱の強さを知りません!!
このような機会は無い為、是非!」
『………、分かったよ。
任務は夜だしね。付き合おう』
千寿「え、任務があるのですか?」
『柱の空席を埋める為に、最近私の所に任務が来ているんだ。
今は柱二人、遠征に出ててね。
でも問題ないよ。直ぐに片付く事だから』
杏寿「!いや、無理を言って申し訳なかった!
任務は優先するべきだっ!
こうしている間にも鬼に苦しめられている人々がいる!
俺との稽古はまた次の機会に──」
『問題ないよ。私は体力の消費を、呼吸で最低限抑えられる。
それに、未来の柱となる君の力になれるのであれば、
その方がよほど人々の為になるよ。
さあ、うちの屋敷までおいで』
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年6月22日 15時