佰肆拾肆日 ページ17
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桜雲「結局俺の奢りかよ………」
店から出て、桜雲殿は財布の中身を見ながら
長い長いため息をしていた。
あの後、しのぶ殿が私の分も奢るように説得し、
カナエ殿もそれに加わり、桜雲殿は折れるように
私の分の勘定を済ませてくれた。
自分で払うと言ったのだが、しのぶ殿から「いいのいいの」と
押される形で丸め込まれてしまい、
カナエ殿もカナエ殿で、たまに悪ノリをするのか
にっこり微笑んで桜雲殿をやんわりと説得していた。
あ、あの桜雲殿を………この姉妹強いな……
桜雲「ちょっと技が使えるようになったからって、
調子に乗りやがって………あー、やだやだぁー!」
カナエ「でも桜雲先生、何だかんだ優しいわよね。
指導してくれている時だって、
私達が分かるまで付き合ってくれるんだもの〜*」
桜雲「あーあー!何のことだかさっぱりだわぁー!!
ったく、今までの継子よりも扱いづらいったら。
はぁー調子狂って困る」
しの「分かるまで付き合うって………
あれはどう考えたって高みの見物で
嘲笑ってるようにしか思えないんだけど??」
『まあまあ、桜雲殿のそれはそういうんじゃないよ。
カナエ殿の言う通り、君達を見守っているのさ。
照れ屋だから隠しているだけで』
桜雲「そよ風ぇ………今から稽古でもするかぁ??
ボコボコにしてやるわ………!!」
『はは、遠慮するよ。
私が負けてしまうのが目に見えているし、
桜雲殿もそれではつまらないのでは?』
桜雲「だー!!こいつらマジで嫌ぁー!!!!」
帰路を歩きながら、彼らの会話を聞き、温かい気持ちになる。
こんなに楽しそうな桜雲殿を見るのは久々だな。
前は継子を亡くして、分かりにくいが塞ぎ込んでていたから。
胡蝶の二人が来てくれて本当によかった。
桜雲殿は口ではああは言うが、
彼から伝わるのは、彼なりの愛情の深さ。
彼は心の内を暴かれるのが好かないから、
相手の気持ちを感じ取れてしまう
私に苦手意識を持っているだけで。
私には分かる。素直じゃない男だ。
『君達が隊士に成ったら、
とても優秀な剣士になれるだろうね』
カナエ「そうなれるよう、まだまだ頑張るわ。
しのぶとは別々での修行だけど、きっと二人でなってみせる」
しの「ええ。まだ、鬼と戦える程の力は付けられていない。
努力して、沢山の人を助ける存在になる。
姉さんと二人で」
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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年6月22日 15時