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十六度 疾風勁草 ページ18

円環の鬼side







私は二人の人間に取り押さえられた。
片方は容赦なく私の後頭部を鷲掴み、地面へと叩きつけ、
首筋に刃を突きつけた。
もう一人は私の腕を捉え、後ろで拘束された。

速い。普通の鬼狩りではないことはすぐに分かった。








??「お館様っ!ご無事ですかっ」

??「どうやって入ったァ!この糞鬼がァ!!」








降りかかるのは、憎悪が込められた視線。
特に白髪の男からは尋常じゃないほどの
憎しみが込められている。
炎のような赤髪の男は、冷静に状況を分析しているようだった。

私は避けなかった。
だが二人は私の頸を跳ねなかった。
今すぐにでも出来たはずだ。
なのに何故、私の頸を跳ねない?


そう疑問に思ったが“お館様”と呼ばれた
鬼狩りを纏める男を見ていて、疑問は晴れる。
この男は瞬時に状況を理解して、
一言も発することなく、僅かな手の動きのみで
この二人の剣士を制止したのだ。

手を私にかざすような動作をするだけで剣士を止めるとは。
彼らをまとめるこの男が持つ、
人を率いる力は凄まじいものだった。








??「何故止めるのですかお館様!!」


輝哉「彼女からは聞かなければならないことが幾つがある。
彼女は無惨に繋がる情報を持っているんだ。
それに、また子供を失うのは私も悲しいかな」


??「子供……?何を仰っているのです。
こいつは鬼です。鬼は殺さなけれ、ば──」











その時。
私の頭を押さえつけていた白髪の男は
一度私の方へと視線を向けた。

そして………男は──










??「………は、……ァ………?」










呆気にとられた、とはまた違うが、
一瞬、何故か動揺を隠せない、
信じられないものを見ていると言わんばかりに
私を見ていた。

………それは、私を知っているかのようなものだった。
いや、正確には………私ではなく、
この体の持ち主の事、だろうか。


揺らぐ瞳からは、動揺と………
僅か、ほんの僅かに………
悲しみを含んだようなものを感じ取れた。



そこで、察した。
嗚呼、この者は………大事なものを奪われた人間なのだと。
その奪われたものを、私が我がものとして利用している。






声には出さず、白髪の男はハクハクと
なにかの言葉を口にした。











“A”──











確かにこの男は、そう口にした。









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作者名:冷泉 雪桜 | 作成日時:2023年4月18日 21時

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