番外編 結婚記念日 ページ38
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「結婚記念日、何かやりたい事でもありますか?」
食事中、銃兎は突然そんなことを聞いてきた。
口に入れようとしていた料理を一旦皿の上に置き、銃兎の後ろの壁に掛けられているカレンダーに目を向けた。今日の日付を確認して再度銃兎の顔を見る。相変わらずにこにこと掴みづらい笑みを浮かべて、私の返答を待っているようだ。
「銃兎、まだ私達籍入れてから三ヶ月しか経ってないよ。大丈夫? 銃兎の体内時計はバグりバグってグルッと一年先回りしちゃったのかな? それとも歳だから三ヶ月が一年の様に感じちゃってるのかな?? どのみち手遅れだね」
「三ヶ月も、経ったんですよ。結婚記念日は確かにまだ先ですが、三ヶ月記念をしようと思いましてね」
「…」
「何ですかその疑いの目は」
「…職場の女の子のアドバイスとかだったらめちゃくちゃ嫌だなと思ったなんて絶対言ってやらない」
「声にバッチリ出してますよ」
「わざとに決まってるじゃん」
嫌味たっぷりに言い捨て、食事を再開する。今日は銃兎が仕事から早く帰って来てくれて、一緒に作ったパスタだ。トマトソースとガーリックが絶妙なバランスで組み合わさったこのパスタは、私も銃兎もお気に入りの一品でよく食べる料理で、結婚してからもう何度も一緒に食べている。
「そもそも、私の職場には女性は少ないですし、いても色恋沙汰に鈍い方ですよ。ああ、受付の女性は私の指輪を見てとても驚いていましたね」
「最後の情報ちょーいらないんですけどー」
「そう拗ねないでください。…ほら、付いてんぞ」
身を乗り出し、私の頬に付いたトマトソースを指で拭ってくれた。そして舌先でそれを舐めとり、伏し目がちな目でこちらを見つめる入間さんに顔が熱くなる。
この人はすぐこういうことをスマートにこなしてしまうから苦手だ。その仕草がカッコよくて、私の心臓はいくつあっても足りない。
「で、何して欲しいんだよ。女は記念日が好きだろ?」
「その辺の女と一緒にしないでくださーい。そんなの自分で考えるのが常識だと思いまーす。サプライズで私を驚かせるのがいいと思いまーす」
「サプライズは心臓に悪いからやめて欲しいと私に言ったのは貴方ご本人ですよ? いいんですか?」
「それは高校の時だから時効でーす」
「じゃあ頑張って考えてね」と銃兎より先に食べ終えた私は食器を片付けにキッチンへ向かった。
珍しく悩んでいる銃兎の姿を見るのは少し楽しかった。
三ヶ月記念日の日、本当にサプライズで新婚旅行に行こうと海外行きの航空券を渡してきたのはまた別の話。
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きのこ - 読んで2年?後にまた戻ってきた、きのこです!!この時まだ私高校生だったんですよねー!!懐かしい、、今でも銃兎さんは大好きです!!以上、きのこでした!!з=⊃`∀)⊃ヒョオッ (2020年10月25日 1時) (レス) id: 2a559184c7 (このIDを非表示/違反報告)
りりほん(プロフ) - もー本当に最高です…!!また新しいエピソードが読めるとは思ってなかったのでめちゃくちゃ嬉しいですヾ(●´∇`●)ノ (2018年10月31日 8時) (レス) id: 460225bc41 (このIDを非表示/違反報告)
ちはや(プロフ) - 銃兎さんの鎖骨触りたい (2018年10月24日 22時) (レス) id: 4790ffbdc3 (このIDを非表示/違反報告)
トマトご飯(プロフ) - 最高に好きです……!!!やだもう泣けました!!!感動しました!!!好きです!!!完結おめでとうございました!!! (2018年9月13日 21時) (レス) id: ca4bdb1a57 (このIDを非表示/違反報告)
しあ。(プロフ) - かっくいいなぁ!このこ((( 後何か下っぱぽい方々は明日会いに行くので悪しからず。 (2018年9月13日 11時) (レス) id: 3344a8c17f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:id | 作者ホームページ:
作成日時:2018年8月8日 1時