22 ページ22
.
あの日の仕事以来か、私と中原さんは最低限の会話しかしなくなった。
お菓子も渡さなくなり、部屋に頻繁に行くことも無くなり、遂に中原さんは私の事をA。ではなく柊。と、以前の様に呼ぶ様になった.
『…そんなに俺の事が、怖いか? 』
直ぐに「違います」と否定すれば良かったものの、私は答えるのを躊躇した。
何で…直ぐに云えば、こんな事にならなかったのに。
あの日の意気地なしの私を殴り飛ばしたい。
はぁ…と溜息を吐き、資料を持ち直す。
中原さんの部屋に行くというのに私の気分は下がる一方。少し前の私とは大違いだ。
中原さんの部屋に着き、ノックをしようとした時、ピタリと私の腕は止まった。
中から中原さんと女性の声がしたからだ。
女性「中原さん最近甘い物が食べたいって聴いたんで、中原さんの為に作ったんですぅー」
中原「俺の為に…か? あ、あぁ…ありがとな」
女性「此の子、中原幹部の事が気になって気になって、普段滅多にお菓子なんて作らないのに作ったんですよー」
中原「なンかワリィな」
キャッキャと女の人と中原さんが楽しそうに話している声。
腕が自然と下がった。
来た道を早足で引き返す。
気が付いたら私は非常階段の隅でうずくまっていた。
そうだよね。浮かれてた私。自分だけ名前呼びされて憂鬱感に浸かってたんだ。
莫迦みたい。
中原さんは私みたいな意気地なしより、積極的な女の子の方が好きに決まってる。私なんて元から眼中にすら入ってない。
夢の見過ぎ。
悪い夢の様で、良い夢の見過ぎ。
立ち上がり又中原さんの部屋に向かう。
未だ女性達の声は聴こえるが無視してノックを三回。そして「柊です」とぶっきらぼうに云い、中に入る。
私の顔を見た女性二人は厭そうにして、中原さんは少し驚いた顔をしていた。
「今日の仕事の分は終わらせました。では」
話す事なんて無い。
紙束を机の上に置いて帰るだけ。
中原「A…柊」
中原さんが私を呼んだが、私は一礼だけして部屋を出た。
一瞬、名前で呼んだのに、如何して……苗字に云い変えたの…?
辛いよ…矢ッ張り……。失恋だよ…こんなの。
初恋は失恋し易いと云われるが、そうみたいだ。
実際に私が失恋しかけている。
涙が頬を伝った。
175人がお気に入り
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
重力遣い - 楽しく読まさせて頂きました! (2017年8月11日 13時) (レス) id: 0860c9172b (このIDを非表示/違反報告)
世界のバカっこ!(プロフ) - アリア・パルシェさん» 何百もある文スト作品の中でこんな私の作品が一番好き…ですか?嬉しすぎて塩水が…。゚(゚´Д`゚)゚。テストも次回作も頑張ります!!最後まで読んでいただき有難うございました!! (2017年2月15日 22時) (レス) id: 391940a815 (このIDを非表示/違反報告)
世界のバカっこ!(プロフ) - 未来さん» 中也さんはイケメンなのです(真顔)最後まで読んでいただき有難うございました!! (2017年2月15日 22時) (レス) id: 391940a815 (このIDを非表示/違反報告)
世界のバカっこ!(プロフ) - 冬椿 秋楓さん» 柊ちゃん嬉しくて喜んでます。中也さんと。他の作品も頑張ろうと思います!!最後まで読んでいただき有難うございました!! (2017年2月15日 22時) (レス) id: 391940a815 (このIDを非表示/違反報告)
世界のバカっこ!(プロフ) - 如月白蘭さん» 女の子であればみんな小さくても恋心を持っている。その恋心を揺さぶれて嬉しいです(笑)最後まで読んでいただき有難うございました!! (2017年2月15日 22時) (レス) id: 391940a815 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:id | 作者ホームページ:
作成日時:2017年1月27日 0時