3 ページ3
.
太宰「Aさん。」
「へ!?あ、治君。」
仕事を終わらせ、家に帰る気はあまりせず、街中を歩いていると見慣れた後姿を見つけた。名前を呼ぶと肩をビクリと震わせ此方を恐る恐る振り返るAさん。だが、私の顔を見るとホワホワとした何時もの笑みを見せてくれた。
両手には買い物袋。
そっと、自然に右手に持っていた買い物袋を持ち歩き出す。
「治君いいよ別に!重いでしょ其れ?」
太宰「重いから持ったんですよ。」
「もー優し過ぎるよ治君ったら。」
太宰「嬉しい褒め言葉有難う御座います。」
然程重くは無い荷物。両方共持ってあげたいが…やり過ぎの優しさを見せると気持ちがバレてしまいそうで私は敢えて程々の、ギリギリの優しさを見せる。
気付いて欲しい様で、気付いて欲しく無い此の気持ち。
知ってしまえば何処かに彼女は消えてしまうだろう。
もう誰も大切な人を失いたく無いと思うと私は如何も弱気になってしまう。今も、過去の記憶と云う名の鎖に縛られ、Aさんにグッと近付きたくても、触れたら消えそうで、鎖がつっかえて、手は届かない。届かさせてくれない。届かせない。
此の距離が、一番良いんだ。
私がAさんの隣に立つ時、必ず人一人入りそうな位隙間を開ける。
理由は簡単。彼女の隣は空いていないから。
判っていますよと行動で見せている。
太宰「今日はあの後直ぐに買い物へ向かったんですか?」
「うん。早く帰って、夕御飯作らないと!彼の人が帰って来るまで。」
太宰「Aさんの手料理が毎日たべれるなんて相手の方は嘸嬉しいでしょうね。」
「…如何かなぁ。」
太宰「……何か、あったんですか?」
あゝ、嫌いだ。
少し彼女が相手の人の事で悲しそうな顔をすると嬉しく思う私は嫌いだ。
「私の料理をね、あんまり…美味しいとか云ってくれないの。」
太宰「…。」
「頑張ってるんだけどなー。」
此処で、私なら毎日美味しいと云うよと云ったら彼女はどんな反応をするだろうか。
太宰「……頑張って下さい、としか云えませんね。」
「だよねー。御免ね、変な事云っちゃって。」
太宰「大丈夫ですよ。」
貴女と一秒でも長く居れるのなら、どんな話だって何時間でも聴きますよ。
55人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
緋弥希(ひびき)(プロフ) - 最高でした。太宰さんがかっこよすぎて死にそうです・・・世界のバカっ子さんあなたは神ですか!あなた様の作品を三作ほど読みましだがどれも面白かったです! (2017年1月24日 6時) (レス) id: 16e7dfbeaf (このIDを非表示/違反報告)
百鬼レヴェル(プロフ) - 中也さん全力期待 (2017年1月14日 13時) (レス) id: a171e3b181 (このIDを非表示/違反報告)
世界のバカっこ!(プロフ) - 鳴狐(25)さん» ハンカチ片手に続きを読んでくださいね…(笑) (2017年1月9日 0時) (レス) id: 391940a815 (このIDを非表示/違反報告)
世界のバカっこ!(プロフ) - 秋さん» 一気に更新したので完結できましたー(*^^*) (2017年1月9日 0時) (レス) id: 391940a815 (このIDを非表示/違反報告)
鳴狐(25)(プロフ) - 太宰さんが泣く前に私が泣いてしまいました(笑)更新頑張ってください!! (2017年1月8日 23時) (レス) id: d659bfb877 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:世界のバカっこ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Haisatuki13/
作成日時:2017年1月6日 22時