じろーせんぱい！【 ヒプマイ 】

1話 ページ1

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入学式の日、じっとしておけばいいものを私は我慢できずお手洗いに行き、さあ帰ろうと思えば自分の教室がどこかわからなくなってしまい、涙目で校舎をうろうろしていると、ぽんぽんと肩を叩かれ振り返ると不良みたいな男の人が立っていて、私はとっさに「ごめんなさいっ！」と頭を下げてしまった。あ、これこそやっちゃいけない行為なのではと恐る恐る顔上げるとその人はくすくすと笑っていた。



「1年生…だよな？」

「あっ、あの、1年3組の教室ってどこですか！」

「あー…お前が嫌じゃなければ送ってってやるけど…。そもそもここ2年の校舎だし」

「2年の！？ う、嘘…」

「マジ」



ほら行くぞと私に背を向けて歩き出す2年生の人。見た目はすごくヤンキーみたいだけど、すごく優しい人でほっとした。入学早々怪我したなんて笑い話じゃ済まないしね…。

時々後ろを向いて私が着いてきているか確認している男の人の慣れた様子を見るに、きっと普段からこういうことをしているんだろうな。下に兄弟がいるのかな。それも有り得るなぁ。

ぼーっと上の空の状態で歩いていたら「着いたぞ」という声とともに、目の前の壁が立ち止まりそれに気づけなかった私はドンッと男の人の背中にぶつかってしまい、私の体はいともたやすく後ろに傾き、転けるっ！と衝撃に備え目をつぶる。が、いつまで経ってもやってこない痛み。代わりに手首を誰かが掴み引っ張ってくれている…感覚がする。
ゆっくり目を開くと、男の人がビックリした顔で私の手首を掴んで後一歩のところで助けてくれていた。




「っぶね…大丈夫か？」

「は、はいっ…大丈夫です！ じゃなくてごめんなさい！」

「べ、別に礼なんていらねぇよ。それより、早く中入った方がいいんじゃねぇの？」

「七瀬さん今までどこに行っていたんですか…って、山田くん！ あなたがこの子を連れ出したんですね！」

「ちが、」

「そーっすけど？ じゃあ俺はこれで」

「山田くん！ 後で職員室に来なさい！」




山田さんは私の手首から手を離せば、先生から逃げるように来た道を戻って行ってしまい、あっという間に姿が見えなくなった。全くもう…と隣で先生がため息を吐き、教室に入るように私を促した。口でははいと返事したが、頭の中はさっきの男の人のことでいっぱいで、なんで名前聞かなかったんだろう？ とか、また今度お礼がしたいからとか言ってクラス聞けばよかったなんていう後悔が残る。


でもそれはほんの数日で解決された。



「入学式の！」

「あ、」



なんと、同じ委員会にあの山田さんがいたからだ。

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