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と、連れてこられたのは物静かなカフェだった。
それこそカメラもなければ、人もほとんどいない。
「え、撮影は……?」
「……今は忘れろ」
奥の方の席に座らせられて、彼は店員さんを呼んだと思うとケーキセットとコーヒーを1つずつ頼んだ。
「ところで、さっき読んでたのは……」
「哀歌……エレジーがテーマの本だよ」
重々しい古びたハードカバーの本を見せてあげれば、小さく唸った。
「なんでまたエレジーテーマなんか……」
「この前、天馬くん主演のドラマで失恋モノ演じたでしょ?それで、失恋した主人公の悲しみの気持ちがどうも気になって」
これかな、って。
「天馬くんは演じてるときしんどかった?」
「……まぁな。役に入り込んでるオレとオレ自身は性格から違うけど、オレがこの立場だったらって考えてみたら、わりと結構、苦しかった気もする……」
「やっぱりか……。天馬くん、演じてるとき本当に苦しそうな顔してた。役だから当然なんだけど、その中には天馬くんが見えた気がしたよ」
「……。お前にはお見通しなんだな」
やがてケーキセットとコーヒーが届く。
サングラスを外した天馬くんは、明らかに天馬くんだとわかるはずなのに店員さんは何も言わないでくれた。
「ケーキ……」
「好きだろ?」
「天馬くんもでしょ?」
「オレは今、ケーキって気分じゃない」
あーあ。本当に昔と変わらないなぁ。
涙が零れてしまいそうだった。
素直じゃないのに私には無駄に優しくて、明るくて負けず嫌いで全部カッコイイ。
いつの間にこんなに差が開いてしまったんだろう。
「ほら、A。口開けろ。
こうでもしなきゃ食べなそうだからな」
「うん……」
フォークに刺さった赤くて大きなイチゴが私の口に運ばれた。
甘いのに、ちょっとだけ甘酸っぱかった。
「……はっ?え、何、泣いてるんだよ?!」
「……なんでも。おいしくて泣けてきた」
困らせてはいけないのだ。
私がエレジーを唄うだけでいい。
彼は何も知らなくていいのだから。
「……A。好きだ」
どこか別空間から聞こえてきた気がした。
お願いだからそう思うことにしておきたかった。
「恋愛ばっかり演じるオレが自分の身に起こる恋愛に疎いとでも思ったのか?」
「なんて……」
「だから……っ、好きだって言ってるだろ」
「なんで……っ」
素直じゃないのに、やけに素直だ。
「好きなヤツ泣かせるほどオレは出来てない」
極めつけはこのセリフで抑えていたのにまた溢れ出してきた。
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はゆー(プロフ) - あゆみさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて光栄です!(*´ `*)これからも、ろい様と力を合わせて更新をがんばっていきたく思っておりますので心待ちにして頂けますと幸いです。あゆみ様をキュン死にさせてみせますのでよろしくお願いします、、!笑 (2019年4月28日 19時) (レス) id: 6a466921ec (このIDを非表示/違反報告)
あゆみ(プロフ) - 毎回めちゃめちゃいいお話ありがとうございます…!!1話読み終わる度に投票してもうしてあるので失敗するという流れを繰り返してます…次の更新も待ってます!! (2019年4月28日 1時) (レス) id: bf0195af74 (このIDを非表示/違反報告)
ろい(プロフ) - 灯無さん» く、口から血が……!?ですが、キュンキュンは抑えません!(笑)これからもドキドキ、キュンキュン全力で恋のサンプルをお届けします! (2019年4月1日 21時) (レス) id: 221a5d6f5e (このIDを非表示/違反報告)
灯無 - ろいさん» いえいえ!良かったです(^ ^) これ以上キュンキュンすると口から血が出そうです。楽しみに待ってます! (2019年3月31日 22時) (レス) id: 126e456bd1 (このIDを非表示/違反報告)
ろい(プロフ) - 灯無さん» ご指摘ありがとうございます!めちゃくちゃ無意識でした!これからははゆーちゃん様と合わせます!更新楽しみにしておいてください、キュンキュンさせてみせます(真顔) (2019年3月31日 16時) (レス) id: 221a5d6f5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はゆろい x他1人 | 作成日時:2019年3月31日 2時