Homare Arisugawa.R ページ16
『魔法が溶けるその日まで』
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私は某編集社に所属しているしがない会社員だ。今日は4月1日、世ではエイプリルフールというらしい。そんな時でも関係なく仕事に励まなければならない世の中を恨みつつも、有栖川先生が住んでいるMANKAI寮に断りを入れてお邪魔をしている。
有栖川先生と御影さんの部屋である205号室に入る。するとそこには御影さんだけが居た。
「御影さん、有栖川先生は…?」
「アリスなら詩興が湧かないとか言って、紅茶を飲みに行ったけど」
「もしかして有栖川先生、原稿が出来てないんじゃ……」
「知らない」
フイッと顔を逸らして、眠たげに目を擦る御影さん。そんな姿を見ながら、有栖川先生が執筆をする時に座る椅子と机を見る。
…良い机だなぁ、いや有栖川先生は育ちがいい所なんだっけ。なんて思いつつ、私の身体に突き刺さる視線の先を辿る。
「あのなんですか、御影さん」
「…眠たそうだと思って」
そう言って、自身が座っているベッドをポンポンと叩いた後に手招きをした。
私が首を傾けていると、むっと不機嫌そうな顔をしてこちらへと歩いてくる。
「っ、あの御影さん」
「こっち」
「うわっ!」
手首を掴まれて引っ張られる。重心が移動してそのままベッドに突っ込む形で倒れ込んだ私。不思議と身体は痛くなくて目を開けると、至近距離で最初に見えたのは御影さんの整った綺麗な……、
「ご、ごめんなさい!!!!!」
御影さんからバッと光の速さで離れる。そんなことをしていたから気づかなかった。第三者がこの部屋に入ってきたことに。
「……何をしていたんだい?」
「あ、りすがわ、せんせい」
ドギマギしながら名前を呼ぶ。
有栖川先生はニコリと微笑み、口を開く。
「密くん、監督くんが呼んでいたよ」
「…分かった、じゃあまたね、A」
「えっ、ちょっと、御影さ、」
私の気持ちも知らずにドアはパタリと閉まった。なんとも気まずい状態を見られてしまった私としては助けて欲しいところだけど。
「密くんと何をしていたんだい?」
「普通に話してただけ、だと思います」
「ふむ…、そういうことか」
何かを考え込む仕草を見せる有栖川先生。そんな仕草に首を傾けながら、原稿を貰い受ける。
パラパラと目を通して、口を開く。
「有栖川先生、最近は恋をテーマにした詩が多いですね。何かあったんですか?」
「……さぁ、どうだろうね」
有栖川先生は何回聞いても教えてくれなかった。
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はゆー(プロフ) - あゆみさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて光栄です!(*´ `*)これからも、ろい様と力を合わせて更新をがんばっていきたく思っておりますので心待ちにして頂けますと幸いです。あゆみ様をキュン死にさせてみせますのでよろしくお願いします、、!笑 (2019年4月28日 19時) (レス) id: 6a466921ec (このIDを非表示/違反報告)
あゆみ(プロフ) - 毎回めちゃめちゃいいお話ありがとうございます…!!1話読み終わる度に投票してもうしてあるので失敗するという流れを繰り返してます…次の更新も待ってます!! (2019年4月28日 1時) (レス) id: bf0195af74 (このIDを非表示/違反報告)
ろい(プロフ) - 灯無さん» く、口から血が……!?ですが、キュンキュンは抑えません!(笑)これからもドキドキ、キュンキュン全力で恋のサンプルをお届けします! (2019年4月1日 21時) (レス) id: 221a5d6f5e (このIDを非表示/違反報告)
灯無 - ろいさん» いえいえ!良かったです(^ ^) これ以上キュンキュンすると口から血が出そうです。楽しみに待ってます! (2019年3月31日 22時) (レス) id: 126e456bd1 (このIDを非表示/違反報告)
ろい(プロフ) - 灯無さん» ご指摘ありがとうございます!めちゃくちゃ無意識でした!これからははゆーちゃん様と合わせます!更新楽しみにしておいてください、キュンキュンさせてみせます(真顔) (2019年3月31日 16時) (レス) id: 221a5d6f5e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はゆろい x他1人 | 作成日時:2019年3月31日 2時