mission 1 ページ15
しまった、バレた。
思わず赤葦は舌打ちした。
振り向かれた。顔らしきものが無いからわからないが、きっとこっちを認識した。狙っているのがバレてしまった。
でも、撃ったら当たるかもしれない。
微かな希望に賭けて再度引き金に指を掛けたとき、影が動いた。
その動きに、どこがとは言えないけれど胸が騒ぐような感じがして、寸前で赤葦は狙いを見当違いの方向へ、ほぼ天井へ向けて引き金を引いた。
乾いた音と、ガラスの割れる音がして部屋が陰る。銃弾は蛍光灯に当たったらしい。すると影は入り口付近にいた二人の間をすり抜けてどこかへ行ってしまった。
「赤葦? 今……」
「ごめん孤爪。うまく言えないけど今の影の動き何か変じゃなかった?」
「え?」
こっちが狙っていることが影にバレた。影は動こうとした。それは赤葦の予想の範囲内だった。だからこそ赤葦は、万が一でも当たるかもしれないからと引き金に指を掛けたのだ。
自分の狙いの定まらない銃弾も、それから影が逃げようとすることでもしかしたら上手いこと当たるかもしれない、そう思って。
けれど、あの影は。
「あの影……」
「!! 待って。足音……? 聞こえる。誰かがこっちに向かって走ってきてる」
確かにそれは聞こえた。ただし影よりは重い音だった。そして何より速い。声が聞こえてきた時点で、孤爪は肩の力を抜いた。
「――しさん!! 赤葦さん!! 孤爪さん!! 無事、ですか?!」
「影に、当ててない?!」
全速力で走ってきただろう二人は肩で息をしていた。
「二人ともどうしてこっちに?」
「銃声、聞こえて、」
「あぁ……撃ちました」
「当ててないよね?!」
「は、はい」
当たらなかったと言うべきか、当てなかったと言うべきか。とにかく弾は影ではなく天井へめり込んだ。
「よかった……当てちゃ、ダメっす」
「……どういうこと?」
及川が先程の出来事の一部始終を説明する。
そこで赤葦は、自身の感じた違和感の正体をはっきりと知ることになった。
「影を傷付けたら、おれたちも傷付くってこと?」
「……それ、向こうも知ってるかもしれません。俺がさっき撃とうとしたとき、あの影はそれに気付いて……」
そして、“当たりに来た”。
当たっていたら、どうなっていたのか。
「それじゃ……影は攻撃しても消えないってことになるね」
「どうする? 何か手掛かりはあった?」
「いえ何も……」
「そっか……」
振り出しに戻ってしまった。
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わか - 神作品だとおもいます! (2月6日 20時) (レス) @page50 id: ba86f2a0b9 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - ぽすとがかりさん» 2年ぶりにこの作品をまた思い出してくださって大感謝です、ありがとうございます!! 長く覚えて頂けているというのがとても嬉しいです。 (2022年1月17日 19時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
ぽすとがかり - 2年くらい前に出会ったこの作品をもう一度見たくてめっっちゃ探しました!やっぱり何度見てもホントに感動します!作ってくださりありがとうございます!!もう神様 (2022年1月17日 15時) (レス) id: f31b841de2 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - zeroさん» 大分昔の作品なのに読んで頂けて嬉しいです。ありがとうございます! (2021年9月5日 3時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
zero(プロフ) - もうこれ神作品以上 (2021年9月3日 15時) (レス) id: 0d7a47aa6b (このIDを非表示/違反報告)
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