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その日の午後、私は一度も宮くんと目を合わせなかった。いくら私とて今日この日から前のとおりとはいかないから。だから視線をそちらに向けないくらいのことは許して欲しい。
気疲れが無くなった代わりのように、私の頭には疑問が付きまとった。難しいものじゃない。二択の問いだ。
嘘か本当か、それだけの話なのに。
好きか嫌いか、それだけの話なのに。
いや、きっと嫌いではないのだろうけれど。あの日の夜は確かに宮くんが恨めしかった。でも恨めしさというものは続かないらしい。でなければ私は、浮かれる度にこれが嘘だと言い聞かせるなんてことをしなくても良かったはずなのだから。
そろそろ帰らなきゃな。もうチャイムも鳴ったのだから。さっきから荷物もまとめずにぼうっとしてしまっていた。机に視線戻し……その時机に影が複数人分落ちていたことに気付く。その影の持ち主達を見上げる。
「……なに?」
「あー、えーっと、その、」
嘘告白の首謀者たちだった。
彼らは歯切れ悪く、けれどどこか好奇心を滲ませて。彼らは私を覗き込んでいた。その口が再び開かれる。
「マジで宮と……いや、宮と付き合っとるってマジ?」
信じられない、とその目も聞き方も言っているようだった。まあ、その勘は当たってるけれど。
「……付き合って」
「付き合っとる言うたやろ。人の彼女に絡むなや」
上から声が降ってきた。反射的に振り返ろうとすると、手首をがしっと掴まれた。そのまま立ち上がらせるように引き上げられる。いつかの時のように、大股で歩いていく彼に着いていくために小走りする。
がらりと扉の開く音がした。
ああ、よりによってここか。私達が今まできっと一番長く一緒に居た空き教室。弁当も持たずに入るだなんて不思議な気分だ。
「……別れたつもりはないんやけど?」
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えま(プロフ) - せなけいこさん» そこまで言っていただけてただただ感謝です!! ありがとうございます!! (2020年10月3日 15時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
せなけいこ - 星の数が足りません!めっちゃ好きです!! (2020年10月3日 14時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - おかか。ですか?さん» ありがとうございます!! 作品を楽しんで頂けたようで幸いです!! (2020年9月7日 18時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
おかか。ですか? - 私の語彙力がないせいで言い表せないんですけど、めっちゃ面白かったです!最高でした!! (2020年9月7日 17時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - せりなさん» 天才だなんて!! 身に余る言葉です、ありがとうございます!! (2020年5月13日 5時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
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