15 ページ15
「ん〜あまり何かを変えてるつもりは無いんだけどなあ」
「……そうなん？」
出てきたのはやはり無難な言葉。さっきの本音は喉の奥の方へ引っ込んでいったし、それが正しい。あれは言っちゃいけなかった。会話が冷えるのもそうだけれど、それ以上に。
……お前はどうなんだって話になる。
「っ、そうだよ。あんまり何か変えようとか思ったことは無いな〜」
「そうなんや。ならもっと皆坂城さんが良い性格しとるの知ればええのにな」
「エッ」
あ、悪い顔をしている。
悪い顔をしているのにそれが様になっているのが、この状況だと妙にムカつく。この場合の“良い性格”と言うのがどういう意味になるのか分からないほど馬鹿じゃない。つまりはあれだ。
真面目で大人しく、気弱で優しい子……じゃないのを全面的に出してけば？ ってことなんだろう。でも生憎、何でそんなイメージを持たれてるかさっぱり分からない。
「いつもこんな感じだし、知るもバレるも無いよ」
「ホンマにぃ？ 猫かぶってること全く無いん？」
「うーん、猫かぶりが必要な時もあるよね」
「かぶっとるんかい。坂城さんよく分からんわ」
今日の宮くんは前までの完璧な“彼氏が彼女に向ける笑顔”を作らない。なんだかそれが気楽でよかった。眉間にシワを寄せて何か考え込んだり、口を尖らせてむくれたり。自然体のようだ。とまで思考が行ったところで、ぐいと思考が戻された。
自然体って。何をもって自然体なのか。
さっき飲み込んだはずの言葉は喉の端に引っ掛かっていたらしい。そのまま私をチクリと刺してくる。
“普段もこんな感じだけど宮くんが知らないだけじゃない？”
これ、そっくりそのまま私にも言えることなのに。
宮くんが普段どんな性格なのかを私は知らない。これからも知れない。何故なら宮くんは嘘をついているから。私と付き合ってる時点で、いつも通りの宮くんなんてある訳が無い。
それは向こうにとっても同じことで、私がここで猫をかぶろうがかぶるまいが同じことだった。言葉の端々に嘘が見え隠れするこの状況で、どの私が本当の私かなんて分かるはずがない。全て嘘という訳でもないから、余計に複雑だろう。
そう、全てが嘘じゃない。嘘が苦手な私が良かれと思って最初に決めたことだ。
本当の事も少しずつ混ぜていくのだと。
後々私はこの行動に苦しめられることになる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 680人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
えま(プロフ) - せなけいこさん» そこまで言っていただけてただただ感謝です！！ ありがとうございます！！ (2020年10月3日 15時) (
レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
せなけいこ - 星の数が足りません！めっちゃ好きです！！ (2020年10月3日 14時) (レス) id: ef980343e4 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - おかか。ですか？さん» ありがとうございます！！ 作品を楽しんで頂けたようで幸いです！！ (2020年9月7日 18時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
おかか。ですか？ - 私の語彙力がないせいで言い表せないんですけど、めっちゃ面白かったです！最高でした!! (2020年9月7日 17時) (レス) id: 0ecde9d0b0 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - せりなさん» 天才だなんて！！ 身に余る言葉です、ありがとうございます！！ (2020年5月13日 5時) (レス) id: 1055510b53 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
