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人気のない、むしろ俺しか居らん音楽室は静かやった。
それはAちゃんが居った時も同じやったけど、違う。静けさの種類が違う。閑散とした、あるべきはずのもの、居るべきはずの人が居ない、そんな静けさやった。絵に例えるのなら、背景はあるのに主役が居らんって感じやろうか。
あの昼下がりの音楽室そのものを体現しとるような彼女が居らんここは、どこか未完成に思えた。
弁当引っ提げて、俺はいつもの席に向かう。一番前、ピアノ近くの、窓側から数えて一列目の席。柔らかな日が射すその席……の隣の席。もはや特に何も考えずにそこに座った。一種のルーチンワークみたいやな、なんて思う。
冷めた弁当に箸を伸ばして、ただひたすらにそれをロに運ぶ。その間目線はずっと音楽室のドアの方。来るかもわからんその人を待っとる俺はなかなかに女々しい。
習慣になりつつある一連の行動は、未だに乱されたことがない。ここに来て、飯食って、たまにピアノで遊ぶ。Aちゃんの歌っとったあの片想いの歌を何とはなしに口ずさむ。そんで教室に戻る。
俺の行動はまだ邪魔されへん。
ここにはまだ誰も来とらんかった。
無言で手早く食い終わった弁当を片してピアノの方に足を進める。うるさくしたところで誰に迷惑掛けるでも怒られるでもない、やのに俺の足は勝手に足音を殺す。ここには居らんあの人のために、勝手に動く。それを自覚する度にきりり、と心臓辺りが痛くなる。
誰も居らん音楽室に、規則性の無いピアノの音と下手くそな俺の歌が鳴る。いや、下手くそって程やないとは思うんやけど。あの後歌詞を調べてみたし、何となく練習もした。昼のこの暇な時間を潰すには丁度ぴったりやった。そしてそんなこんなで、下手とまではいかへんけどそれなりに聞けるくらいにはなった。
「けど俺の比べる対象Aちゃんやからなぁ」
敵うわけない。練習量もそうやけど、掛ける想いがそもそも違う。俺がバレーに向けるそれを、Aちゃんは歌に向けとる。というか、想いそのものをぶつけるようにして歌っとるんやろう。
やから俺は確信した。あの声に、嘘はない。
相手が誰やとしても、あの歌に嘘はなかった。
と、俺の耳が音を拾った。
ぱたぱたと軽い、でも急いどるような靴の音。
がらりと扉の開く音を拾う。
「……宮くん？！」
かき乱す。
音楽室の静けさ、それから俺の胸も。
はじめっからAちゃんはそうやった。
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えま(プロフ) - 春塩さん» コメントありがとうございます！！ 尊敬するだなんて嬉しいです照れます……ひたすら楽しく執筆したものですが、春塩さんにも楽しんで頂けたのなら幸いです(*´∇｀*) (2018年11月13日 21時) (
レス) id: 8f82649d25 (このIDを非表示/違反報告)
えま(プロフ) - 杏采さん» コメントありがとうございます！！ 一気読みなんて大変でしたよね……！！ 嬉しいです(*´ω｀*) これからも頑張ろうと思います！！ (2018年11月13日 21時) (レス) id: 8f82649d25 (このIDを非表示/違反報告)
春塩(プロフ) - 完結おめでとうございます。尊敬するお二方の合作、本当に素敵でした。侑くんと夢主のやりとりがとても可愛くて切なくて、最後までずっと引き込まれていました。素敵な作品ありがとうござました。執筆活動応援しております！ (2018年11月13日 17時) (レス) id: 7ae3000a58 (このIDを非表示/違反報告)
杏采(プロフ) - 完結おめでとうございます。憧れのお二方の合作と聞いて即座に反応して一気読みしてしまいました。ありふりた言葉しか出てこないのですが、本当に素敵な小説をありがとうございます。これからも頑張ってください！ (2018年11月13日 17時) (レス) id: d19c07683e (このIDを非表示/違反報告)
ウ タ(プロフ) - kyo10aaa1877hanさん» 更新遅くなってしまって申し訳ないです、お待たせしました！(*¨*) (2018年9月12日 11時) (レス) id: 12a750fc54 (このIDを非表示/違反報告)
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