4.取引 ページ10
｢若頭みたいですね｣
｢うるさい｣
恭弥さんは私が漏らした笑いを鬱陶しそうに払い、襖を開け放った彼に面を上げろと命じる。ほんとに時代劇に出てくる人みたいだ、とまた笑った私の頭が掴まれた。
｢うるさいよ｣
｢すみません｣
ぎぎぎ、と音が聞こえそうな程力を込めて私の頭蓋を粉砕せんとする彼。ごめんって。
襖を開けた男がじゃれている私たちを交互に見て、言いにくそうに口を開く。
｢お迎えに上がりました。ボンゴレの皆様もお見えになったようです｣
＊
鶯張りのように踏みしめる度鳴る床は幾つになっても落ち着かない。隣で黙っている恭弥さんが何を考えているかもわからないので、会話する気にもなれず無言の空間が続く。
感覚的には永遠に続くようにも思われた長い廊下も時間で言えば数十秒しか経っていない。
｢着きました｣
襖を開け横についた男がそう言うと客間の人物と相見える。沢田さん側には数人の同じ程度の歳の人間、そして道玄の側には祖父と父、母、兄の姿がある。全員緊張の面持ちでその場の空気はお世辞にも良いとは言えない。
恭弥さんを先頭に入ると見知った顔が部屋に入ったことで両側が安堵のような息を漏らした。尚この空気でいつもと変わらず涼しい顔をしている恭弥さんは、この場に限ってかなり頼もしい。
床の間の前に座る一族と対面する形で座し、深く頭を下げる。恭弥さんは特にそういうことをする気はないようである。もう少しこの空気に流されてくれませんか。
｢A｣
｢はい｣
頭を下げたまま返事をすれば面を上げることを命じられる。名前を呼ばれることによって私は会話の許可を得る。
久しぶりに顔を合わせた家族は、長らく関わっていないからかどうにも他人だという気持ちが強い。
｢本日はワタクシ、上宰之Aと雲雀恭弥様の婚姻の名目の元に提案が御座います。故にこの場を借りての失礼を重々承知で発言致しますこと、お許しください｣
堅苦しい喋り方はもうできないと思っていたのだが、案外人間やれば出来るものだ。今ここで息苦しい！と暴れ回りたい心持ちなのだがそうもいかず、隣の恭弥さんの顔を窺うと目が合う。
｢提案とは、道玄との離縁の件を白紙にしていただきたい｣
父が眉を顰めるも理由は、と先を促す。それに対しては私ではなく恭弥さんが口を開いた。
｢今日で発覚しただろうけど、僕はボンゴレに関わっている。Aをこちらに寄越したところで根本的な解決にもならないどころか、却って危険に身を晒す
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さとう(プロフ) - コメント失礼します。とっても面白くて何回も読み返してしまいます！夢主ちゃんと雲雀さんの歪な関係がとてもグッときます。影ながらいつも応援しております。更新無理せず頑張ってください！ (2019年6月18日 23時) (
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作者名：銀竹 | 作成日時：2019年5月28日 20時
