14.道 ページ33
*
｢ね、ねえ獄寺君、やっぱりあれって俺の聞き間違いじゃない……よね？｣
｢そうっすね。俺も聞こえてました｣
十字路へ向かう道中、沢田と獄寺が声を潜めて会話している。彼ら二人の前には、雲雀に支えられてなんとか歩くAの姿と、彼女とは逆側にいる巳緑の背中だ。
あの時、廊下の先から微かに聞こえた巳緑の言葉を後続で追いかけていた三人は聞いていた。固まった沢田を置いて足を速めた雲雀の言った、何をやらかすかわからない、という言葉が沢田の頭を駆ける。
なるほど、ここまで大きな混在した感情を人にぶつける男は確かに、何をしでかすのかわからない。まるで、彼らがいつか見たザンザスという男のように。
フルフルと首を振った沢田を心配しつつ、目の前に着いた十字路を訝しげに眺める獄寺。
相変わらず異様なカーブミラーの数だが、全てが真ん中を向いている。多くある中のどれかを覗けば道の先を映し出しているかもしれないが、それに確証など無い。地元の人間は大半が気味の悪い道だと言いながらも鏡を頼らず通っているため、実は交通事故の起こりやすい道だ。
住宅街の中に堂々存在する違和感だらけの場所は、怪談に出てくる舞台として相応しい。
Aがふらり、と十字路の真ん中に躍り出ようとする。
先程から限界だというように雲雀に全体重を預けて辛うじて薄目を開けている姿はなんとも見苦しい。本人も眠気からかさっさと済ませたい思いが強いようで恐怖を薄れさせている。
沢田の発そうとした言葉虚しく中央に彼女が立った瞬間、馴染みのある感覚が一行を襲う。
眩暈で膝をついたAが駆け寄った巳緑に起こされる。
｢なんだいこれは｣
｢……幻術｣
｢事象としての名前ではないのかい？幻覚って｣
｢違う、君の言う幻覚じゃない。特定の場所特定の相手に故意に見せることのできる術｣
ダラリと脱力したAを道の端へと座らせた巳緑が不思議そうに辺りを見回す。
十字路の真ん中を映し出すミラーには真っ赤な光。
｢青、の筈じゃないのかな｣
首を傾げながら四つの道に幽霊のように朧気な存在感の子供が一人ずついる。
｢ねえ、鏡に映るのは青白い光、なんだったよね？｣
｢そうだ｣
一番話を把握している獄寺が答える。その様子はオカルト現象に触れられたことに高揚していたが、幾度と無く感じたことのあるソレにがっくりと肩を落としていた。
｢上下の感覚が無くなったのはAが極端に幻術耐性がないせいだ。
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さとう(プロフ) - コメント失礼します。とっても面白くて何回も読み返してしまいます！夢主ちゃんと雲雀さんの歪な関係がとてもグッときます。影ながらいつも応援しております。更新無理せず頑張ってください！ (2019年6月18日 23時) (
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作者名：銀竹 | 作成日時：2019年5月28日 20時
