6.幻 ページ16
外へ出た本来の目的を見失っていた私だったが、獄寺さんの『薬局』という言葉で思い出す。そう言えばシャンプー切らして出て来たんだった。
じゃあ、なんて手を軽く挙げて別れた彼は、木陰でまた何かを考え込んでいるようだ。ボンゴレには癖の強い人間しかいないんだろうか。
いやまだ希望はある。今のところ恭弥さんと獄寺さん以外深くは関わっていない。まだ、まだ常識人のチャンスはあるのだ。
私が変人以外を欲して歩いていると、目的地である薬局に着いた。考え事をしながらの移動というものは時間があっという間に感じる。
至って普通に入り、至って普通に詰め替え用のシャンプーを手に取り、至って普通に買う。
もう寄り道はせずにさっさと帰ってしまおう。少し疲れた頭でそんなことを考える。
いつも通りに住宅街の件の十字路に差し掛かるが、あんな子供騙しで怖がる程私も純心では無いのだ。あんなものなんともないね。
何の躊躇もなく、と言えば嘘になる。彼の語り口が少々上手かったせいか背筋に嫌な汗が伝うも、あるわけないだろう、と半ばヤケクソで十字路へ突っ込む。
ギュッと瞑っていた目をそうっと開けばいつもと何ら変わらぬ景色。
ほら、バカバカしい。
安堵の息を漏らして、やたらと多いカーブミラーを見やると、何か光が見える。
は、と短い音と共に喉が急に絞まる。
待ってよ、そんなんあるわけないでしょ。
青白いぼんやりとした光が全てのカーブミラーに写っている。
あの話を聞いた時に何も思わなかったが、それは異常なことなのだ。だって、だってこの十字路のカーブミラーは、その役割を果たしていない。
カーブミラーなどと聞こえよく言うものの、全然、全く、機能していない。
何故か真ん中だけを写すように作られているのだ。一体誰がなんの為にこんな付け方をしたのかもわからず、だがしかし誰も何も口を出さない。
そして十字路の中心を写すべき鏡それぞれが青白い光だけを反射している。なんなのだ、これは。
どうしてその鏡に私の姿がひとつも無いんだ。
ゾッとした。
硬直した体へ必死に鞭打つように、四つ辻を見渡せば小さな子供。齢十は行かぬ子供が四人、私を取り囲むように立っている。
浅い呼吸で打開策を手繰り寄せる。獄寺さんの言っていた正面方向の本物。正面、ああもうどちらから来たのかあやふやになってきた。自分が地面に足をついているのかすら怪しくなる。
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さとう(プロフ) - コメント失礼します。とっても面白くて何回も読み返してしまいます！夢主ちゃんと雲雀さんの歪な関係がとてもグッときます。影ながらいつも応援しております。更新無理せず頑張ってください！ (2019年6月18日 23時) (
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作者名：銀竹 | 作成日時：2019年5月28日 20時
