旅の途中 ページ9
マーク視点
国際線のターミナルを出て、事前に手配していたタクシーに乗り込む。
どうせ明日の夜には帰るのだから荷物はほとんど持ってこなかった。
雪がちらつく街をタクシーは駆けていく。
『多分もう、Aヌナはここにはいないと思うけど』
下手に明るい声で、少しだけ肩を竦めたヘチャニが教えてくれた場所は異国の、観光地から少し外れた静かで綺麗な石畳の敷かれた街だった。
いかにも西洋建築といった面構えのホテルに荷物を預け、コートのポケットに手を入れ、宛てもなくふらふらと街並みを通り過ぎていく。
今ここで会えるとは思っていないけど、Aはここに来たんだろうか。
好きそうな所だとは思う。
人がそう多くなくて、少し雨は多いけど比較的過ごしやすい気候をしている。
ただ冬は寒すぎるから、やっぱり今頃は暖かいところにいてほしいけど。
子供たちの遊ぶ公園を抜ければ橋まで行きつき、川の流れに沿うように歩き出す。
ゆっくりと二時間かけてホテルまで戻って、それでも部屋には行く気がしなくて、そのホテルの一階にあるカフェで暖かい飲み物を注文した。
外がよく見える窓際に座ると、ガラスから冷気が伝って来る。だけどそれも気にならない。
行き交う人を眺めながら、またそこで時間を潰す。
そうしていればふとした拍子に、三席ほど離れて座っていた綺麗な白髪をした老齢な女性と、新聞の上から目が合った。
小さく頭を下げてみれば、その人は几帳面に新聞を折りたたんで机の上に置く。
ティーセットを持ち上げて立ち上がり、中の紅茶を零さないように歩を進める。
そのまま自分の隣のテーブルに座って、一呼吸置いたあと、ゆったりとした口調で話しかけてきた。
「ここから何か、面白いものでも見えるのかしら？」
「いえ、特には」
「それじゃあ貴方、何か探し物をしているのね」
鼻に掛かった眼鏡の上から見上げるようにオレへ問う質問はその通りで、一瞬ドキッと肩が跳ねるままに頷いてしまう。
「……どうしてわかったんですか？」
「ここはほら、美しい街並みをしてるでしょ？観光ガイドにも大きく載ってるくらい」
「はあ……」
「それなのにどこにも行かないで、静かに外を眺めてる人間なんて、変人じゃなきゃ訳ありの人間くらいなのよ」
白い髪をしたその人はティーカップを持ち上げ、窓の外を眺めながら口を付けた。
オレも同じように視線を外へ向ける。
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さっちゃん(プロフ) - 作品読ませていただきました。途中胸が苦しくなるほど、とても良い作品でハッピーエンドで終わり良かったです。またトキメキと良い意味での胸の苦しさを求めて何度も読もうと思います。素敵な作品をありがとうございます。 (9月26日 22時) (
レス) @page49 id: 585b81384e (このIDを非表示/違反報告)
ちるぬな(プロフ) - 初めてこの作品を読ませていただきました。言葉遣いからストーリー構成まで、ほんとうに好きです。素敵なお話ありがとうございます。これからまた何十回と読ませて頂きます^_^ (9月20日 21時) (レス) @page49 id: 7c0a70e250 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» 私こそすみません…！作品の方また楽しんでいただければ幸いです！ (2021年8月31日 11時) (レス) id: 9dd39ae13b (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - せのさん» そうだったんですね！失礼いたしました...！ (2021年8月30日 21時) (レス) id: ef764b671d (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» こちらこそ読んでくれてありがとうございます〜〜！！Twitterはしてないので教えられず……！ (2021年8月30日 16時) (レス) id: 01bd2f8507 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：せの
| 作成日時：2021年8月2日 0時
