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話し始めさえすれば、まるで元通りだとでもいうような錯覚を受けることになる。
「―――アレはユタヒョンが仕組んだんだよ。ユタヒョンとテイルヒョンと、それにヘチャニが」
「でもヘチャンはずっと可愛かったよ、いい子だったし」
「そんなのAの前だけだろ」
「そうかなぁ」
「Aの知らない所で、どれだけオレ達がヘチャニから苦しめられた事か……」
「でも可愛いんでしょ？」
「そんな、いや……まあ、そうなんだけど……」
Aがストローをくるくると回しながらレモネードをかき混ぜて笑う。
グラスにはじわりと汗をかくように水滴がくっついていた。
そう言えばあの街で聞いたのもレモネードだったなと思いながらAを見つめる。
久しぶりにあったAは、何も変わってないように見えた。
表情も、姿も、話し声も、全てだ。
笑うと目を細くするその仕草ですら自分には変わったように思えなくなって、そうするとあの日の、過去のAが今のAと溶けて行って、何が何だかわからなくなっていくようにも思えた。
それにAも自分も、昔と同じ様に他愛のない話で笑い合えた。
春に日本へ行ったときに見た桜の話や、忙しすぎて死にかけた頃の話、それにジャニヒョンの家に泊まった夜の話とか。
次々と出てくる話をオレ達は、まるで昨日あった出来事のように話していられる。
懐かしさは哀愁なんて呼んだりせず、ただただ楽しかった過去だけが重ねられていった。
記憶を辿るように話していって、どれくらいが経っただろうか。
隣の席に座ったお客さんは何度も変わり、半分こしたドーナツの皿を片付けて貰えば、とうとうAが辞める頃の話まで行きついてしまった。
それでもAは、笑みを落とす事も無く口を開く。
「辞める時はね、出来るだけセンセーショナルな方が良いって言われて」
「な、なんなのそれ……」
「引き際をどうやってプラスに持っていくか考えたとき、唐突で、寂しくて、ちょっと理不尽なくらいがグループを後押ししてくれるんだって。偉い人がそう言うから」
口角は上がっているけど、後ろめたく思っているのか、Aは自分の指先を握ったり離したりしている。
……今気付いたけど、Aの指には指輪がない。
それだけじゃ結婚しているかどうかなんて解らないけど、ほっと一つ息を吐きだせば、頭の隅っこのほうからヘチャンの意地悪な笑い声が聞こえてきた気がした。
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さっちゃん(プロフ) - 作品読ませていただきました。途中胸が苦しくなるほど、とても良い作品でハッピーエンドで終わり良かったです。またトキメキと良い意味での胸の苦しさを求めて何度も読もうと思います。素敵な作品をありがとうございます。 (9月26日 22時) (
レス) @page49 id: 585b81384e (このIDを非表示/違反報告)
ちるぬな(プロフ) - 初めてこの作品を読ませていただきました。言葉遣いからストーリー構成まで、ほんとうに好きです。素敵なお話ありがとうございます。これからまた何十回と読ませて頂きます^_^ (9月20日 21時) (レス) @page49 id: 7c0a70e250 (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» 私こそすみません…！作品の方また楽しんでいただければ幸いです！ (2021年8月31日 11時) (レス) id: 9dd39ae13b (このIDを非表示/違反報告)
はるか(プロフ) - せのさん» そうだったんですね！失礼いたしました...！ (2021年8月30日 21時) (レス) id: ef764b671d (このIDを非表示/違反報告)
せの(プロフ) - はるかさん» こちらこそ読んでくれてありがとうございます〜〜！！Twitterはしてないので教えられず……！ (2021年8月30日 16時) (レス) id: 01bd2f8507 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：せの
| 作成日時：2021年8月2日 0時
