堀川くんの怒り 三 ページ47
姫国side
姫国「はははっ」
堀川「ちょっと、何がおかしいの？」
姫国「いいや。ただ、あの堀川くんが、兄弟のことで怒るなんて、珍しいというか•••変わったなって」
堀川「そうかな？」
姫国「うん。だって、今までは「僕、堀川国広の真作かわからないし」って言ってたでしょ」
堀川「昔のことだよ」
姫国「うん。でも、今は違うから。だから、変わったなって思ったんだよ。山姥切たちが変えてくれたんだね」
堀川「•••うん。そうだと思う」
姫国「兄弟の仲が良いのは、見てて微笑ましいよ」
堀川「僕からしたら、長谷部さんと春のほうが、よほど仲良く見えるよ」
姫国「なにせ、一緒にいる年月が違うからね。でも、堀川くんは一年ちょっとで、兄弟と仲良くなって、怒れるようになったんだね。僕は、堀川くんの怒りは間違いだとは思わない。けど」
堀川「けど？」
姫国「長義さんの言い分も間違ってはないと思うんだ」
堀川「え、なんで？」
姫国「だって、写しを打たれるのは名誉なことでもあるけど、危険なことでもあるんだ。僕たちがここにいるのは名のある刀剣だからっていうのはわかってるでしょ？ソハヤさんも写しだけど、そもそも名前が違うし。でも、山姥切たちはそうじゃない。同じ名を持つもの同士。実際、現代の文献を見ると、山姥切長義が本歌ではあるけど、山姥を斬ったのは山姥切国広だって書かれてるものもあるし」
堀川「あ、そっか•••」
姫国「逸話は、僕らの強さだ。その強さを奪う相手を、憎まずにいられる？」
堀川くんは俯く
姫国「この件は、誰が正しくて、誰が悪いとかもない。兄弟を偽物呼ばわりするいきなり現れた奴に怒る堀川くんも正しいし、強さ、ううん。いろいろなものを奪われてきて、これからも奪われるかもしれない写しを憎む長義さんも正しい。だから、あんま自分を責める必要ないからね」
堀川「うん•••」
姫国「首、ごめん」
堀川「大丈夫•••」
姫国「長義さんに謝るならついてくからさ。別に、僕は謝らなくてもいいと思うけど」
堀川「•••」
姫国「だって、僕が堀川くんの立場で、兄さんを悪く言われたら」
相手を、斬っちゃうかもしれないから
父様の傑作を貶す奴らは許さない
堀川「言われたら？」
姫国「秘密ー」
そう言って、僕は部屋をあとにした
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作者名：兼さんの耳飾り | 作者ホームページ：http://yuzunoki
作成日時：2023年10月23日 16時
