第六譚 回り回った日常 ページ7
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電車爆発テロ事件が幕を閉じた。
決して本人に直接勇気が無い訳ではない、多分。
理由としては言おうにも、人混みから見つけ出した与謝野が足早に立ち去るものだから結果見失い、断念したのだ。
その後、矢張り死亡者が出ていた様で亡骸を運び出されていくのを目撃してしまった。
当然Aは耐性がなく掘り返された悍ましい恐怖で又もや脚が竦んだ。
これは不可抗力だ。
ブルーシートで覆われていようと多少の臭いは充満する、それが疲労した精神にかなりくる。
それを見兼ねた警官は事情聴取を後回しにし、落ち着くための時間を作ってくれた。
その間を有難く利用して、Aは少しでも落ち着くため、現状化に対する結論をつけていく事にした。
まだ頭がうまく回らないが、車両での衝撃事実にそれなりの、仮定でも良いから結論をつけておいた方がいいだろう。
先ずはなんと言っても爆発テロのこと、と行きたいのだがそれよりもAには確認すべき事項があった。
「此処は、この世界は若しかしたら…」
うちが居た世界じゃないかもしれない。
こんな突拍子も無い、ヘンテコなことは言いたくないが、その可能性が浮上した根拠が実際に現れてしまったのだ。
それは、車窓から見えた“川”だ。
今更だが云わせて欲しい。
うちが帰宅の際、乗車していた電車は
___地下鉄だ。
地下鉄に乗っているのに窓から川が見えるか?
答えは否だ。
先頭車両から響いてくる凄まじい爆音と共に明らかに場違いな、光に反射した煌びやかな川が今でも鮮明に脳裏に焼き付いている。
追加で言うと、うちが乗車した時刻は午後七時半なのに空はまだ昼に差し掛かったばかりであるような綺麗な青空だった。
その光景から導き出された答えがそれだ。
誰か不可解すぎるこの状況を説明してくれ。
そう泣き叫び乍ら縋り付きたいが生憎奇異な目を向けられる度胸は母親のお腹に置いてきたし、知人すら周りにいない今、頼れる相手は何処にも居らず、一人で頭を抱えるしかなかった。
これは夢だと現実逃避しようと咄嗟に思いついた、典型的な方法も試みた。
然し幾ら頬を抓っても痛むだけで、寧ろこれが現実であることを証明されて尚更混乱するだけだった。
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作者名:食べかけの春雨さん。 | 作成日時:2019年10月11日 23時