ep369 ページ22
—貴女side—
振り向いて見上げた先には、すぐ後ろで紫蝶の羽織を翻す晋助。
冷たく、しかし確かな怒りが渦巻く瞳で眼下を睨みつける姿はまるで……
死の淵から這い上がってきた鬼神のようで近づき難ささえ感じさせた。
それはその場にいた誰もがそうだったらしく、戦場に一瞬の静寂が訪れる。
そして有象無象を見下ろしていた晋助が私へと視線を移した。
伊賀の時みたいに興味なさげに逸らされるかと思いきや、状況を説明しろとでも言いたげな視線を投げてくる。
そんなのこの光景が何よりもの答えなんだけど、と思いつつ
「おはよう、死に損ない」
出来心で揶揄った。
「ほざけ、テメェもだ」
確かに…一緒に崖から落ちるとか私も宜しく死に損ないか。
呆れたとでも言うように吐き捨てられた、まさに正論な台詞に思わず笑ってしまう。
「ははっ、おっしゃる通りで」
不機嫌そうな表情で差し出された手を掴み、私は立ち上がった。
「痛ぁ……」
「折ったか」
「いや折れてはない。君の同盟仲間のお陰で」
鈍痛を放つ肋骨をさすっていれば
「殺せ……あの男を殺せェェェエエ！！！」
朧の激昂と同時に一斉にこちらへと駆け出す奈落。空を見上げれば未だ悠々と浮かぶ敵戦艦が虎視眈々とこちらを狙っていた。
ふぅ、と息を吐いた私は
「ということで寝起きに悪いけど。いかがいたしましょう総督？」
わざと仰々しく晋助の顔を覗き込みながら、にやりと問うた。
帰ってきた答えは勿論
「鬼兵隊に告ぐ。烏どもを踏み殺せェェ！！」
期待通りの模範解答。
奈落を迎え撃つべく崖から一斉に現れる鬼兵隊。晋助も彼等とともに刀を握り、戦場へと踏み入る。
私は、と言えばその背中を眺めながらその場でしばし熟考した。何故ならここが恒例の分かれ道だからだ。
今私が立つのは戦場を一望するのに打ってつけの崖。参謀としてここから指揮を執るのが正解か。あるいは自らも刀を抜いて戦場で戦うのが正解か。
過去と重なる眼下の景色に怖気付いている……そうとも言えるかもしれない。
あぁ……嫌だ。どっちに転んだって自分を責める結末だけ見えてる。
思わず腰に携えた自分の刀に触れて下を向いた時……
「ぼさっとしてる暇はねぇぞA」
————来いッ！！
晋助の叱咤が突き刺さった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1198人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ギラッフェ(プロフ) - 陽-hisa-さん» いつも楽しみにしてくださってありがとうございます。何よりもの励みになっています！今後とも楽しんでいただけると嬉しいです(^^) (9月2日 0時) (
レス) id: 7a3023c2c7 (このIDを非表示/違反報告)
陽-hisa- - お久しぶりです。攘夷とこんなに上手く絡ませている作品、やはり私的にはこの作品が一番です。一番好きです。これからも楽しみにしています。応援しています。 (8月31日 19時) (レス) id: cd440b7134 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - るぅさん» いつもありがとうございます！ベタ褒めしていただいて嬉しい限りです笑 今後ともよろしくお願いします！ (8月22日 9時) (レス) id: 1bbdb8d99e (このIDを非表示/違反報告)
るぅ - いつも読ませて頂いてます！大体どの作品も恋愛系の作品が多いのですが、占ツクで面白い作品に出会えると思ってなかったです笑コメント見させて頂きましたが、オチなしの結末を考えているとの事で個人的にホッとしました笑これからも応援してます！ (8月21日 21時) (レス) @page48 id: 0469468a88 (このIDを非表示/違反報告)
ギラッフェ(プロフ) - ひーさん» コメントありがとうございます！読み返してくださるのとても嬉しいです！今後ともよろしくお願いします！ (8月10日 9時) (レス) id: da4440489d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ギラッフェ
| 作成日時：2022年1月26日 0時
